哲学者マイケル・サンデルの講義は
AIによる無人運転と無関係ではない
マイケル・サンデルの講義は、ある事態を想定します。
まずレクチャー1があり、そのレクチャー1の条件を少し変えたレクチャー2があり、さらにレクチャー3、レクチャー4と続くもので、単一の話で終わるわけではありませんが、ここではレクチャー1だけを想定します。あまりに有名な問い掛けなのでご存知の人も多いかもしれません。
まず、あなたは時速100kmで自動車を運転しています。
すると、ブレーキが壊れていることに気付きました。
前方には5人の人がいて、直進すれば5人をひき殺すことになります。
しかし、横道にそれれば1人の労働者を巻き添えにしますが、前方の5人は助かります。
さて、あなたはどちらの選択肢を取りますか?
この問い掛けにはもちろん正解はありません。
ちなみに、彼の授業を受けた大学生の大半は「横道にそれる」、すなわち、「5人を救うために1人を殺す」ことを選んだそうです。
では、あるAIが、この選択こそが人間にとっての「正義」であると学習したとします。
そして、そのAIが無人運転をしていたと仮定しましょう。
すると、その自動車は前述した状況に陥ってしまいました。
時速100kmで走る自動車のブレーキは故障し、前方には5人の人がいます。
ただし、1つだけ状況が違うのは、今回は、横道はありません。
横は強固な壁になっています。
しかし、そこで急ハンドルを切って壁に激突すれば、自動車に乗っているあなたは死にますが、前方の5人は助かります。
そして、「5人の命は1人の命よりも尊い」と学習したAIならば、壁に激突することを選ぶでしょう。
さて、ここで問題です。
あなたは、そのようなAIが無人運転をする自動車に乗れますか?
「5人の命は1人の命よりも尊い」としても、「5人の命は自分の命よりも尊い」と言い切ることができますか?