市民ランナーの星・川内優輝選手、数多くのJリーガー、なでしこジャパンの次世代アンダー17など、今、日本で注目を集めるスポーツ選手を続々輩出している幼児園がある。それがバディスポーツ幼児園だ。現在、世田谷や豊洲などに園を持つバディは、幼児期からのスポーツ教育に力を入れた“体育会系幼稚園”ながら、保育園並みの長時間預かりが可能な今最も注目を集めている幼児教育施設の1つだ。
同園は30年前から、独自のスポーツ教育と長時間預かりを同時に実現するために国からの補助金を得られない認可外保育施設として運営されているが、月謝は3万6500円ほどという価格設定のため、入園希望者が後を絶たない人気ぶりだという。なぜ、保育料を抑えつつ非常に充実した幼児教育と保育が行えるのか。その背景には、同園の鈴木威園長の凄まじい経営手腕があった。
女性が働く時代を見越していた!?
30年前に認可外幼児園を始めた理由
石黒 鈴木園長は、幼稚園と保育園の機能をもったこの「バディスポーツ幼児園」を30年も前から始められたそうですね。今でこそ、認可外かつ株式会社方式の幼児教育施設は増えていますが、なぜこうした先進的な施設を当時から始めようと思われたのですか。
Photo by Kazutoshi Sumitmo
鈴木 事業をする上で大切なのは、「在庫を持たない」、「毎月一定した金額が得られる」、「先に現金がいただけること」だと私は考えています。私は20歳の頃、清掃などを請け負うビル管理事業を経営していたのですが、その3つのうち、「先に現金がいただけること」だけはクリアできませんでした。そのため、収入が入ってくる前に従業員に給与を支払うことが、会社規模が大きくなるほど大変になっていました。また、300人ほどを雇ってパイオニアとして事業を展開していましたが、ビル管理業ですからすぐに真似をされるという問題もありましたね。
当時、オイルショックが起き、それをきっかけに清掃業務のアウトソーシングが減りました。下請け業者との価格競争が激しくなったこともあり、事業では「価格を自分で決められること」も大事だなと感じたものです。そこで、当初からの体育教師になりたいという夢を叶えつつ、上記の条件が達成されている幼児教育の分野へ参入しようと決めました。それが30歳のときです。
この園を始める際、もちろん国には認可してくれとお願いしましたよ。これからは子どもを長時間預かってもらいつつ、良い教育をしてもらいたい親が圧倒的に多くなると考えていましたから。当時から、午前中にスポーツをし、午後に保育をするシステムに需要があると思っていたんです。ただ、幼稚園を管轄する文部科学省は、幼児教育は4時間以内しかダメ、なぜなら小学1年生の授業が4時間以内だから、という理屈なんです。一方の保育園を管轄する厚生労働省も、保育園は生活の場、預かる場であって教育はしてはいけないという縄張りがありました。
もちろん厚生労働省と文部科学省に行って、絶対おかしいから統合したらどうかと話しましたよ。しかし、「先生の言うことはわかるが、そうはいかない」と言われました。だから、認可外で始めざるを得ず、今に至るというわけです。