デジタルネイティブは現実世界では不利
幼稚園に入園する子どもたちに、発達の遅れが見られることが増えているとの報告がなされているのだ。たとえば英国では、教員・講師協会(ATL)が、未就学児のタブレット使用の一般化に伴う問題(注意持続時間や運動能力、敏捷性、会話能力、社会性に関する発達の遅れ、ならびに攻撃的・反社会的行動や肥満、疲労感の増加)が拡大しつつあると発表している。
タッチパネルを巧みにスワイプできるのに、積み木で遊ぶのに必要な手先の器用さは身につけていない――そんな子どもが入学してくることが増えていると、英国の教師たちは報告している。マンチェスターで開催された教師の会合では、「タブレット依存」に対処するアドバイスが求められた。
また、北アイルランドのある教師は、幼い生徒たちが、夜寝る前にコンピュータゲームを長時間プレーしていると話している。その結果、彼らは学校に遅刻し、「デジタル二日酔い」とでも呼ぶべき状態で登校してくるそうだ。集中力の低下も著しく、当人は「まるで自分がその場にいないような状態」だと教師は訴えている。
もし子どもがタブレットだけで遊び、本物の本を目にする機会がなかったとしたら、どうなるだろうか? 喜ぶような話ではないが、その答えを得るのには何時間もかからない。ユーチューブで検索すれば、ある1歳の女の子の映像を見ることができるだろう(現時点での再生回数は450万回だ)。
映像の中で、赤ちゃんに紙の雑誌が与えられる。彼女はそれを膝の上に置く。そして自分の指で、タッチパネルに行うのと同じフリック操作を巧みに行い――紙のページに印刷されている画像が変わらないことに困惑した表情を見せる。次に彼女は、親指と人差し指で、タッチパネルで画像を大きくするときのような動作を見せる。しかしページをめくるという発想はないようだ。
デジタルネイティブは画面の前では優れた行動を見せるかもしれないが、現実世界では不利な状況に置かれ、そこが自分の世界だと感じていないかもしれないということを、この赤ちゃんの行動は証明している。