新井平伊(あらい・へいい)/順天堂医学部学院医学研究科教授。1953年生まれ。78年、順天堂大学卒業。同大学院、東京都精神医学総合研究所主任研究員、順天堂大学医学部講師を経て 97年より現職。順天堂医院メンタルクリニック科長。日本老年精神医学会理事長、日本認知症学会理事、国際老年精神医学会(IPA)理事。主な著書に、『認知症と共に輝く日々をめざして』(飛鳥新社)、『アルツハイマー病のすべてがわかる本』(講談社)、『最新アルツハイマー病研究』(ワールドプランニング)など。

 薬物療法以上に大切なのは非薬物療法です。睡眠、運動、食事に気を付け、規則正しい生活を送るよう指導します。

 認知症の最大のリスクは加齢ですが、他にも、遺伝、高血圧、高脂血症、糖尿病、メタボリックシンドローム、ストレス、喫煙、飲酒、日常生活の活動性、頭の怪我などが危険因子です。これらの排除可能なリスクを減らすことは、認知症予防だけでなく、症状の改善や進行遅延にもつながります。

 また、アルツハイマー病やレビー小体型認知症など大脳の神経細胞に変化が起きる神経変性疾患の予防法は確立していませんが、血管性認知症については、脳血管障害の引き金となる生活習慣病を防ぐのが最大の予防になります。

 介護者が認知症を正しく理解することも重要です。認知症の人は、失われた能力を求められたり、怒られたり、無視されたりすることで、BPSDが悪化します。患者さんが同じ質問を繰り返すのは、不安や気がかりに思っていることがあるからです。本人のつらさを理解し、変化も受け入れ、適切に対応することで、BPSDの軽減や進行の遅延が望めます。

早期発見が大切と言われる理由

 認知症は早期発見が大切と言われます。患者さんの理解力や判断力が保たれていた状態であれば、その後のライフプランを立て、家族も介護について学んで適切な対応ができるからです。

 アルツハイマー型認知症の場合、記憶障害が現れ始めても日常生活ではそれほど不自由のない軽度障害が3~5年、中核症状が進行し、家事や仕事の手順が分からなくなって日常生活にも支障をきたすようになる中等度障害が5~8年、認知症状が著しく低下し、家族のことも分からなくなり、最後に寝たきりの状態になる高度障害が5~8年で、トータル15~25年の年月をかけて病気は進行します。

 中等度の前半くらいまでは仕事ができ、MCIの段階で見つかれば10年は仕事を続けることは可能です。

 若年性認知症の患者さんやその家族は、就労や子育て、親の介護など、さまざまな問題に直面します。家族は一人だけで問題を抱え込まず、医療スタッフ、福祉や介護職員、ボランティアや近所の人などのサポートを受け、さまざまな公的サービスも利用しましょう。同じ境遇の人が集まる家族会で介護のヒントをもらったり、時に息を抜いたりすることも大切です。認知症の人は、認知機能は低下しても人間としての豊かな感情は残っています。認知症になっても本人や家族が幸せを感じて快適な毎日を送れる道を模索していきましょう。

(取材・構成/ライター 東竜子)