「受診対象者はがん検診を受けたくないのではなく、『手間をかけて検診方法や検診場所を調べてまでは受けたくない』『時間があるときに受けよう』と思っているのです。そこで、その場で申し込めるようなきっかけを作っておけば、その方々を説得する必要がなくなります」と同社代表取締役の福吉さんは言う。

 これまでの検診受診ツールのなかには、「往復はがきで申し込むこと」と記載されていたこともあったという。往復はがきを買いに行き、それを書いて投函(とうかん)することは、考えただけでも手間がかかり、なかなか、やる気になれないだろう。

 それでは、残りの6割の人の行動を変えるにはどうしたらいいか。

 福吉さんは「社会の規範意識をつくること」と言う。「規範」とは行動や判断の基準となるもの。つまり、いわゆる「フツー(普通)」の意識を根付かせること、社会の空気をその方向に持って行くことだ。

「いま、5人のうち2人が子宮頸がん検診を受けています。5人のうち3人、4人と増えるにつれて周囲に喚起され、『私も受けよう!』という意識が芽生えるからです」と福吉さんは言う。

 今回は子宮頸がん検診を例に挙げたが、これらの考え方は企業が商品やサービスの購買力を高めるとき、さらには夫婦間のコミュニケーションでも応用できるだろう。

 例えば、「なぜ、ゴミを出してくれないのか」と責めたり、説得したりするよりも、ゴミを出すきっかけとなるよう玄関にゴミをそっと置いておけば、何となくゴミを持って行くかもしれない。
 
「行動科学」のアプローチを日常のどんな場面で使えそうか、考えてみるとおもしろい。