例外は第二次世界大戦後の1945年から1970年代までの高度経済成長期だ。

 先進国、とりわけ戦争で大きな被害を受け、資本ストックの大半を失ったヨーロッパ大陸諸国や日本では、労働者の所得が急増し、所得・資産の不平等が急激に低下していった。

 だが1980年代以後、アメリカを中心に不平等が急速に拡大する局面に接している。

 ピケティの資本収益率rは広い意味での資本へのリターンを総称しており、一般には、利潤、賃料、配当、利子、ロイヤルティ、キャピタルゲイン等を含んでいる 。

 簡略化のために、ピケティの資本収益率rを金融市場の貨幣(実質)利子率とし、経済成長率gを自然利子率と考えれば、rとgの関係は、ヴィクセルの均衡関係、自然利子率と貨幣(実質)利子率の関係と、きわめて近い議論をしていることになる。

 ヴィクセルの累積過程論では、自然利子率が貨幣(実質)利子率より高ければ、景気は過熱して、インフレ状態になる。逆に自然利子率が貨幣利子率より低ければ、景気は収縮して、デフレ状態になる景気循環のメカニズムが説明されていた。

 一方でヴィクセルはr>gが常に成立すると想定するのではなく、rとgの関係が不均衡であることで、資本主義のダイナミズム、すなわち景気循環が発生することを説明している。

 つまり利子率の変動が資産分配や所得分配などの趨勢に影響していることにも注意を払う必要がある。

 金融政策は分配問題とは無関係であると、中央銀行関係者は考えているかもしれないが、貨幣利子率を自然利子率よりも人為的に抑える政策がもたらす分配効果は、ピケティの関係式ではr<gとなる。

 ポピュリズムの支持を集める不平等を抑える方向に働き、企業家精神にあふれた資本主義のダイナミズムを抑圧してきたと言える。

先進国の低金利は
成長のエンジンが移動したから

 金利の変化が実体経済に波及するダイナミズムを認識するとともに、現在の金利を考える上で、もう一つの重要な論点は、世界的に見て、マイナス金利やゼロ金利が普遍的に広がっている訳ではないということだ。