豪徳寺「あめこや」――若いアンテナが、夢の蕎麦屋を創った
ゆったりとしたテーブル配置、喫茶店、カフェのような意匠を夫婦二人で造りあげた。

 それは店の外観や内装からもわかります。

 外の通りから店内はガラス通しで見えます。カフェバーやブティックの発想です。

 外の客は当然通りすがりに店内を見ます。店内の客は見られても平気で、むしろ誇らしげです。

 「蕎麦と酒を中心にして人が憩う」

豪徳寺「あめこや」――若いアンテナが、夢の蕎麦屋を創った
故郷栃木の銘酒、鳳凰美田は女将のセレクション。造り酒問屋が実家の亭主が選ぶ地酒も見もの。

“単なる蕎麦屋でなくて”と喉のそこまで出掛かっているのがわかりました。

“違う領域を開拓していく”ことで、蕎麦の豊かさをこれまで蕎麦に馴染んでいない人たちにも知ってもらいたい、との思いなのでしょう。

 蕎麦屋の先達がしてきた事に「あめこや」もまた挑戦しているのです。

 開店して3年、若手の人気蕎麦屋の亭主や内弟子が何人も「あめこや」を訪問している話は人づてに聞いています。「あめこや」に新しい蕎麦屋のオーラがあることを、彼らのアンテナが感じ取っているのでしょう

(2)蕎麦のオーラ
新蕎麦前線が店を走る

豪徳寺「あめこや」――若いアンテナが、夢の蕎麦屋を創った
創作料理の店にもいた店主らしい作品、貝の酢の物には海ぶどうのアクセントがあって楽しい。

 店内の中ほどに大きな日本絵地図が立てかけられています。“今日の蕎麦”がどこの産地のものかを示すものです。

 新蕎麦は北上する桜前線とは逆に、10月から11月にかけて列島を南下します。

豪徳寺「あめこや」――若いアンテナが、夢の蕎麦屋を創った
蕎麦の名産地、最近脚光を浴びてきた隠れた在来種産地など、ほぼ全国の蕎麦を用意しています。

 かつて蕎麦は信州、関東、北陸、東北、北海道などが特産とされてきました。いまは、それが全国に広がり、九州、四国、山陰、山陰、近畿など、これまで隠れていた産地が名乗りを上げてきました。これから蕎麦を嗜(たしな)みたいという人には、とてもよい時代が来ています。

 「あめこや」の今日の2種盛り十割蕎麦が出てきました。

 1枚目は栃木・益子町の常陸(ひたち)秋蕎麦種です。2枚目は茨城・八千代町のこれも常陸秋蕎麦種です。

 同じ品種でも、蕎麦の色合いも香りも違います。上田さんは北海道から九州まで、全国10ヶ所ほどの産地違いの蕎麦を訪問の都度楽しませてくれます。

 「蕎麦は開店してからも試行錯誤してきました」と上田さんがいいます。