2002年4月にはNPO法人湘南ベルマーレスポーツクラブを設立して、中学生以下を移管した。Jリーグ史上で初めてとなるNPO法人の設立には、トップチームの経営状況に左右されることなく、普及・育成年代を地域全体の「聖域」にしたいという思いが込められていた。

 そして、クラブ存続へ耐えしのいだ激動期を経た2005年に、今現在の監督である曹貴裁(チョウ・キジェ)をアカデミーの統括責任者として招へいする。早稲田大学ア式蹴球部における曹の一学年後輩で、卒業後に日立製作所(現柏レイソル)でもともにプレーした大倉智強化部長(現いわきFC代表取締役)が、サッカーだけでなく人間性をも育てられる、卓越したその指導力に白羽の矢を立てた。

育成組織で育った選手の活躍でJ1へ昇格
金銭的な理由による「選手の流出」が問題に

 ベルマーレ平塚時代のOBである、反町康治監督(現松本山雅FC監督)の下で果たした2009年のJ1昇格は、いろいろなチームから集まってきた中堅やベテラン選手の力に負う部分が大きかった。一転して2012年のJ1昇格は、ヘッドコーチから昇格した曹新監督の下、身心両面で整備・強化されたアカデミー出身の若手たちが躍動した末に勝ち取ったものだった。

 最終ラインには遠藤航(現浦和レッズ)と鎌田翔雅(現清水エスパルス)、右アウトサイドには古林将太(現ベガルタ仙台)、シャドーには菊池大介(現レッズ)と、曹監督がジュニアユース及びユースを指導した時の愛弟子たちが眩い輝きを放った。

 さらにはボランチの永木亮太(現鹿島アントラーズ)、左アウトサイドの高山薫も、川崎フロンターレU-15時代に、指導者の道を歩み始めたばかりの曹監督の薫陶を色濃く受けていた。陣容が様変わりした2012年の戦いぶりを、当時は社長だった眞壁氏はこう振り返っている。

「育成組織から育ってきた選手たちに対して、ベルマーレのアイデンティティー、あるいは地域からの応援といったものがさらに盛り上がらないようであれば、そこまでお金をかけて育成をやるべきじゃないという流れになってしまう。だからこそ、今年はようやく下から育ってきた選手たちで勝負がしたかった。そのためには、監督は曹じゃなきゃダメだった」