疲れがたまると暴れだす「帯状疱疹」。加齢もリスク因子で50代以降に発症率が上昇し、60代でピークを迎える。
帯状疱疹は、いわゆる水ぼうそうの原因ウイルス(VZV)が初感染後に神経細胞に潜伏し、疲労やストレスをきっかけに再活性化して発症する。子供のころに水ぼうそうに感染した人のうち、10~30%が80歳までに帯状疱疹を経験すると推測される。
症状としては、ピリピリするような痛みが先立って現れ、その数日後に左右どちらかの顔や腕、背中、腰回りなどに赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状に出現。水疱が破け、かさぶた状になるまでの期間は10日~2週間程度で、皮膚の表面が正常に戻るまでには1カ月ほどかかる。痛みが消えるにはさらに数週間が必要だ。
重症化すると血管炎や脳梗塞につながるほか、高齢者では腎不全や感染症リスクも高くなる。また、数カ月~数年続く「帯状疱疹後神経痛」が残ることがあり、個別のケースによっては「灼けるような痛み」「眠れないほどの痛み」で日常生活に影響がでる。
日本では抗ウイルス薬と鎮痛剤、ステロイドによる治療が一般的だ。
また、2016年3月以降、50歳以上を対象に、帯状疱疹ワクチンによる予防接種が可能になった。これまでも自由診療として乳幼児用の水ぼうそうワクチンが流用されてきたが、「国のお墨付き」で万が一、副作用が生じても救済対象になったわけだ。自費負担は変わらないが安心して接種できる。
現在、帯状疱疹ワクチンとして日本で利用できるのは「ビケン・乾燥弱毒生水痘ワクチン(一般財団法人阪大微生物病研究会)」と、今年3月に承認された乾燥組替え帯状疱疹ワクチン「シングリックス筋注用(ジャパンワクチン)」の二つ。両者とも効果持続期間は10年ほどだ。今後、高齢化で患者増が予想されるため、定期接種の是非も議論されている。
実際、50歳を過ぎれば加齢の上に、感染症や大手術の後、抗がん剤治療など、免疫が低下してVZVが暴れだす状況はいくらでも想定できる。元気なうちの接種を検討したい。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)