「(尿漏れや尿失禁など)排泄の問題は、人間の尊厳にかかわる深刻な問題です」と後藤医師は語る名古屋大学医学部付属病院・泌尿器科の後藤百万(ももかず)医師

 尿漏れの原因は、単純に老化だけではない。加齢とともに増えて行く、がん、脳卒中、心筋梗塞等々、重篤な病気のほとんどが、予後に排泄の問題に直結する。体調を崩し、入院や手術を受けてすぐなら、オムツになるのは仕方ない。しかし、余生がそのままオムツ生活に突入しまうのはいかがなものか。リハビリが適切でさえあれば、避けられる可能性があるのだ。

 最初の調査の後、後藤医師はNPO法人「愛知排泄ケア研究会」を立ち上げ、病院や介護施設における排泄ケアの実態を調べた。

「介護を受けているお年寄りの半数以上がオムツをしていました。そのうち半数以上は、トイレに連れて行けば自力でおしっこができる状態であるにもかかわらず、『尿漏れがある』、あるいは『尿漏れが心配だ』との理由でオムツをされていたのです。そこで、適切な排泄管理を行えばオムツを外せると思うかを病院や介護施設で聞いて回ったところ、『おそらく外せる』が25%、『絶対外せる』が4.7%。現場のスタッフが排泄についての知識や技能を有していないことや、お年寄りたちは誰もオムツになる前に泌尿器科の診療を受けていないことも分りました」

 まずは介護現場の意識を変えなければいけないと考え、着手したのは、適切な排泄管理やケアを担う専門職である「排泄機能指導士」の養成だった。大学病院としては日本初の試みであり、ケアマネジャー、介護ヘルパー、看護師、介護福祉士、理学療法士、医師など多職種が連携して取り組む先駆的なモデルとして、今では高く評価されている。

「うれしいことに昨年4月からは、病院や施設での排尿自立指導に保険点数がつくことになりました。排泄ケアの重要性と専門性の高さが認知されてきた証です。我々の『排泄機能指導士養成講座』も、保険の対象となるために必要な研修とみなしてもらえることになっています。任意団体の研修では、日本コンチネンス協会と並んで2ヵ所しか認められていません」