上司に話す退職理由が「合わせ技一本」なのは、
「悩みブレーキ」が本当の退職理由だから

 では、彼らが辞める本当の原因はなんだろうか。ここで1つクイズに答えてもらいたい。

 クイズ:「Aさんは時速80キロを出そうとアクセルを踏んで走っています。Bさんも80キロを出そうとアクセルを踏んでいるのですが、なぜかブレーキも踏んで、さらにサイドブレーキまで引いています。どちらが先にゴールに着くでしょうか?」

 いかがだろうか? この質問をされたら、10人中10人全員が、Aさんが目的地に早く着くことは容易に分かるだろう。だから、誰もがAさんのように時速80キロでアクセルだけを踏んでゴールを目指すべきだ。しかし、世の中には、驚くほどたくさんのBさんが存在している。

 先ほど書き出した退職理由のように、ほとんどのビジネスマンが職場や仕事に何かしら悩みを抱えている。そして「悩み」というブレーキを踏んでしまい、本来たどり着くはずのゴールになかなか到達できずにいる。しかも、長くブレーキを踏んだまま走っていると、エンジンまでおかしくなってくる。さらに、このブレーキを強く、長く踏んでいるほど、「退職」という二文字が彼らの心の中で大きくなっていく。

 ここで、ブレーキを踏んで走っている部下の気持ちを考えてみよう。彼らが「辞めたい」と言い出すまでには、下記のような段階があると考えられる。

(1) 仕事や職場の環境が自分の思うような状態ではない
 ↓
(2) 不満がたまり、「悩みブレーキ」を踏み続け、つらくなってくる
 ↓
(3) 環境が変われば楽になれると考えるようになる

 つまり、本人もモヤモヤとしたものを抱えているだけで、自分の置かれた状態を完全に理解できているわけでなはない。ただ、無意識のうちに環境を変えれば状況が変わり、楽になれると思ってしまうのだ。

 とはいえ、退職するにあたって、そんな理由だけで上司を説得するのは難しい。そこで、いろいろな理由を合わせ「こんなにいろんな理由があるから」と、自分と上司を納得させようとしているわけだ。つまり、彼らの退職理由の合わせ技一本の裏には、「悩みブレーキ」という、本人すら意識していないものが存在し、その蓄積が退職スイッチを押す原因となっているのである。