吉田行宏さんの著書『成長マインドセット』吉田行宏さんの著書『成長マインドセット』。「アイスバーグ」や「4つの動機矢印」について詳しくはこちらで解説している

 少々とっぴに思えるたとえだが、こうしたサイレンゾーンの微妙なサインの見逃しは、夫が定年を迎えた時の“熟年離婚”と似ているところがある。仕事をする夫を支えながら妻は不満を募らせているのに、夫はそんなことにみじんも気づかず、妻との第二の人生を想像している。妻は少しずつサインを出していたはずだが、それを見逃した夫は妻に突きつけられた離婚届にショックを受け、もっと早い段階からコミュニケーションを図っておけば良かったと後悔することになる。

 部下の『他責思考→悩みブレーキ→辞表プロセス』から発せられる“辞めたいサイン”を理解し、早めに察知・対応することで、ぜひ“熟年離婚型退職”を発生させないようにしてほしい。

 ここまで、部下の本当の退職理由やそのサインについて述べてきたが、実はこれは単に、会社やチームの離職率低下や定着率向上の目的だけの話ではないことをご理解いただけたと思う。部下の本質的な退職理由こそが、日頃の組織マネジメントには何が必要かを問いかけている。

 今回はこれらを深掘りすることはできないが、最後に、部下の突然の退職を防ぐための行動のヒントとなる4点のチェック項目を下に記すので、ぜひチェックしてみてほしい。これらに関しては、また次の機会に詳しく解説していきたいと思う。

・部下の表面的な仕事や業績だけでなく、人間として正対できているか?

・組織や人材育成に対して、当事者意識を持っているか?

・短期成果だけでなく、時間がかかる人材育成や信頼構築にも時間と思いを割いて、部下の「アイスバーグ(氷山の目に見える部分だけでなく、成果を生み出すために普段は見えない水面下の行動や意識)」を大きくしようとしているか?

・自分と部下の「4つの動機矢印(目に見える・見えない動機、他者のため・自分や家族のための動機)」を理解し、それを伸ばすマネジメントができているか?