子どもの脳に悪影響を及ぼす
マルチタスクの弊害

 家庭学習時間や睡眠時間の減少が学力低下の主因でないとしたら、一体スマホの何が、子どもたちの学習能力に悪影響を与えているか。川島教授は、スマホによる「メディア・マルチタスキング」の影響を示唆する。

『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)このほかにもスマホと学力破壊の衝撃の事実が詳細に紹介されている

「マルチタスクとは、複数の作業を同時にこなす能力のことで、もともとはコンピューター用語です。一見、マルチタスクは良いことに思えますが、一つの事に集中する時間が短いというデメリットがあり、注意機能の低下を招くことも指摘されています。特にスマホは、さまざまなアプリや情報を細かくスイッチングさせるようにできているため、どうしても一つひとつの作業の正確性や効率性が犠牲になってしまいます」

 前述の調査から、スマホを所持する中学生のなんと7割以上が、勉強中にスマホやタブレット等を操作していることが判明した。その中の3割以上は学習中にゲームで遊び、その他にも音楽を聞いたりSNSを使用したりするなどと回答している。これは、社会人である我々も身に覚えがあるだろう。特にLINEに代表されるSNSの使用について、川島教授は警鐘を鳴らす。

「米国の研究では、自宅学習中にSNSを使用している大学生は学業成績への悪影響が強いことが指摘されています。また米国大学の学生を対象にした別の調査では、SNSを使用する時間の長い学生は、教科書などを読むときに注意散漫になりがちだという報告があります」

 自発的に操作する動画や音楽の視聴、ゲームアプリとは異なり、LINEは自分の都合やタイミングは一切お構いなし。だからこそ厄介なアプリである。今から2時間集中して課題をこなすぞ!と、やる気になった矢先にLINEの通知がきて、そのままダラダラとスマホをいじり続けてしまった……誰しもそんな経験があるだろう。SNSが集中力を切らすというのは、確かに筆者自身も強く実感していることだ。

「私たちの脳は、基本的にシングルタスクを行うよう設計されている」と川島教授は言う。

「青少年のメディア・マルチタスキングに関して、海外では、学力の他に認知機能の低下や社会性への悪影響、記憶力低下などを論じる研究が多く存在します」

 私たちの脳はパソコンとは違う。マルチタスクを完璧にこなせるだけの優秀な脳ならば別だが、特に脳が未発達の子どもにとって、マルチタスクが習慣化されてしまうことは脳に大きな負荷がかかる行為なのかもしれない。