平均余命が5~10年も縮む
喫煙者の2割が発症の「慢性閉塞性肺疾患」

 口から吸いこまれた有害物質だらけのたばこの煙は、気道を通ってまず肺に到達します。なので、たばこの害が肺で多く発生することは容易に想像できます。たばこにより気道や肺の防御機能が弱まるので、細菌やウイルスの侵入を防ぐことができず、肺炎が発生しやすくなります。気管・気管支への炎症も誘発することから、気管支喘息の発症も増えます。

 たばこによる肺への弊害は多々ありますが、ここではたばこの煙が最大の原因となる重篤な肺疾患の一つ、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について触れたいと思います。これは、慢性気管支炎や、肺気腫といった慢性炎症性疾患の総称です。

 喫煙者の20%程度が発症すると言われ、炎症の持続により咳や痰が絶え間なく発生し呼吸困難に陥ることがしばしばあります。たばこなどの有害物質が肺胞という空気を取り込む袋状の構造物を破壊すると、酸素の取り込みや二酸化炭素の排泄ができなくなり、体全体に様々な不調症状が表れます。そして、COPDを発症すると、どんなに治療をしても元に戻ることはありません。

 COPDになると平均余命が5~10年短くなることがわかっています。ただし、寿命が縮まる以上にCOPDに陥った方が悲惨なのは、COPDを発症したのに喫煙を続けると症状が急激に悪化していき、一気に重症化してしまうことがあります。そうなると四六時中呼吸苦を感じるようになります。

 生きるために人は呼吸を止めることはできません。呼吸が止まるということは死を意味します。溺れたときのように息ができなくなる苦しさがどんなに辛いか想像に難くないでしょう。COPDは、少し歩いただけで息切れや溺れた時のような呼吸苦を感じ、重症化すると安静にしていても酸素吸入しないと苦しくて我慢できない状態に陥ります。吐くのも吸うのもつらくなり、窒息しているような状態が常に続くことになります。

 どんなに激しい痛みよりも、窒息するほどの呼吸苦は、人にとっては拷問です。たばこをずっと吸い続けているとCOPDに陥る可能性は高まるばかりです。COPDは発症すると治りません。重症化すると、まさに生き地獄の日々を過ごすことになるのです。