手足の冷えから始まり、痛みから壊死へ
血管の病気「バージャー病」では手足の切断も

 たばこは動脈硬化の危険因子であることはよく知られています。「動脈硬化」が進むと心筋梗塞や脳卒中の発症に繋がることも皆さんご存じでしょう。心筋梗塞や脳卒中の発症リスクに関して喫煙者と非喫煙者を比べると、圧倒的に喫煙者の方が発症リスクの高いことが疫学的に示されています。

 例えば、非喫煙者に対して喫煙者は、心筋梗塞の発症リスクが男性は約4倍、女性は約3倍になります。毎日20本以上たばこを吸うと、脳卒中による死亡リスクは、男性では2.2倍、女性は約4倍にもなります。しかし、喫煙者であっても10年以上禁煙すれば、これらのリスクはほぼ非喫煙者と同等になることもわかっています。

 さて、血管の病気の中で特にたばこに関連する疾患として「バージャー病」があります。バージャー病という疾患名は皆さんあまり聞き慣れないと思いますが、最近の調査では全国で約1万人の患者さんがいると推計されています。男女比は9対1と圧倒的に男性に多く、発症年齢は40歳代が中心で青壮年層に多く発症します。動脈硬化症と同様に血流を悪化させますが、動脈硬化に比べるとより末梢の細い動脈の血行を傷害します。背景に慢性の血管炎があり、その発症には喫煙が密接に関係していると言われています。

 バージャー病の症状は、手足の冷え、しびれ、色調の悪化に始まって、進行すると痛みによる歩行障害が発生するようになり、しまいには安静時にも手足が激しく傷むようになり皮膚が崩れて潰瘍や壊死を来すことがあります。動脈だけでなく手足の静脈にも痛みを発症することもある難治性の疾患です。

 治療の基本は、禁煙です。治療として高圧酸素療法や交感神経節切除手術の他に、昨今は遺伝子治療なども行われるようになってきましたが、コントロールが困難なことが多く、壊死が進行すると手足の指の切断やさらには四肢の切断が必要になることがあります。

 禁煙ができずにだらだらしているうちに徐々に病状が進展して、手足を失うことになる怖い病気です。ただし、早期に禁煙を厳守して適切な治療を施せば重症化を防ぐことができ、発症前の仕事や日常生活への復帰が可能です。