日本の大学スポーツに
構造的な問題が潜んでないか?
河田 剛著、ディスカヴァー・トゥエンティワン、224ページ、1000円(税別)
日大アメフト部による悪質タックル問題がいまだに世間を騒がしている。監督からの直接的指示の有無があったかが最初の焦点だったが、世の中の関心は日大の広報対応や会見の司会者の素性、過去のアメフト部内での暴力問題にまで飛び火した。
もちろん、今回の問題は監督やコーチの属性による部分も少なくないだろう。だが、一方で全てを個人の問題として捉えてよいのか。日本の大学スポーツに構造的な問題が潜んでないのか。米スタンフォード大学でアメフトの指導に携わる著者の指摘は参考になるだろう。
本書『不合理だらけの日本スポーツ界』は問題が起きる前に発売されており、今回のような事態は当然ながら想定していない。明らかにプレーに関係ない選手の背中に突っ込む事態を想定する方が難しいだろうが、本書を読むと、そうした事態が米国では指導者が間違っても起こそうと思わないことがわかる。厳罰が処せられるため、あまりにもリスクが大きいからである。では、なぜ厳罰が処せられるか。一言で言えば、大学スポーツがビジネスとして成立している側面があるからだ。
キャンパス内の11万人を収容できるスタジアム、チャーター機での遠征、試合前日の高級ホテルでの宿泊、試合会場へのポリス・エスコート、最高10億円に達するヘッドコーチの年俸…。
日本とは桁違いのスケールであることがわかるだろう。明確なルールが成立するのはお金が集まるからであり、お金が集まるから合理的なルールが整備され、管理されていると著者は説く。