焼き方のロジック

 焼肉は引き算のグルメです。何が引き算かというと焼肉のメインである肉を焼くという調理、仕上げまでをお客自らが行うわけですから、ミスが多くなり、上手くいかないのはある意味しょうがないのです。同じ値段を出しても焼くのはお客さんで、お客さんの技量によって食感、味もかわってきてしまう、不思議だけど人気のグルメ、それが焼肉の正体なのです。肉汁を完全に封じ込めた美味い肉にありつけるお客さんもいれば、焦げや生焼けの肉にしかあり付けないお客さんもいます。素人が故、しかも食事の最後の方は集中力も途切れ、最後には肉を炭化させてしまった経験さえ、あるのではないしょうか。
 肉を火入れする際、肉を置く位置、焼き方、裏返しなど。ミスを最小限に食い止めることが、焼肉を美味しく食べる為に重要なのです。その中でも特に重要なのでが、肉をいつ裏返すがという問題です。
 肉は、きっちりと処理した生肉も美味しいのですが、熱を加えることにより変化し、違う美味しさを生み出します。焼いた肉の音、香味、食感、そして肉汁との一体感。それこそが焼肉を味わう醍醐味でもあります。焼き方で重要なのが、どの時点で裏返すのか?ですが、いつが正解なのか?
 焼肉で肉を焼くときに、内部温度65.5度の壁という言葉を聞いたことがありませんか?肉の構成要素の大きい水分とたんぱく質の関係するのですが、これを知っていれば美味しく焼けるということになります。覚えておいて欲しいポイントは、たんぱく質の主な構成[ミオシン][コラーゲン][アクチン]の3つになります。

たんぱく質の変性を理解すると肉の汗を知る
50度:ミオシンが変性を開始する

ミオシンが収縮して、弾力が生まれることにより、生肉のグニュって食感から、ブツッと歯切れの良い食感に変化します。

56度:コラーゲンが変性を開始する
コラーゲンは筋みたいで、超硬質のゴムみたいな食感ですが、この温度から徐々にやわらかく溶けていき、トロトロのゼラチン質になります。

60度:肉の色が変色し始める
真っ赤だった肉が透明感を失ってきて、ほんのり桜色になってく頃合いの温度。

65.5度:アクチンが変性を開始する
アクチンは、水分をたっぷりつかんでいるタンパク質なので、熱が加わって収縮することで、水分を外に絞り出してしまう、いわゆる「肉汁」を外に排出してしまいます。

[参照:Cooking Maniac