スマホシフトが一変させたモバイルゲーム企業の戦略

小林:DeNAとGREEの戦略が質的に大きく変わってきたのは、スマホが伸び始めてからだと思います。一言でいうと、戦略変数が大きく増えた。ブラウザかアプリか、iOSかAndroidか、国内かグローバルか、といった大きな決断を同時並行で走りながらやっていかないといけなかった。

朝倉:それでいうと、DeNAは2010年の段階で『忍者ロワイヤル』っていう、非常に完成度の高いスマホアプリを出していたじゃないですか。僕、今でも覚えているのが、2010年秋の決算発表で言っていた「X-border(クロスボーダー)」と「X-device(クロスデバイス)」。あれは凄いなと思って見ていました。ちゃんと実態としてのテクノロジーと紐付いていたし、これは盤石やんかと。
僕は当時、社員10人少々の零細スタートアップを経営していましたが、その会社ではガラケー向けに、どのデバイスでも同じアプリケーションを展開できるという、ミドルウェアを作ってたんです。当時はauであれば、BREWっていう言語。ドコモとソフトバンクも微妙に違ったりして。あとソニーエリクソン製とシャープ製、富士通製などなど、デバイスによってアプリの挙動が全く違うといった差異を吸収するミドルウェアを作っていたんですよ。
ところがガラケーからスマホへの移行が一気に進み、iPhoneやAndroidとなった。特にAndroidなんてOSのバージョン違いに対応しないといけなかったから、このミドルウェアをゲーム開発のソリューションとして切り出せないかなと思っていたんですが、そんな矢先に「X-border」「X-device」ってドーンと出たから。「これはすげえな!」と思った記憶があります。

村上:それ、めっちゃ覚えてる。売上高4000億円、海外売上2000億円、営業利益2000億円目指すという目標だったよね。急成長のネット企業が海外に出ていくっていう意味でもインパクトがあった。

小林:注目度が株価にも表れていましたね。

朝倉:当時は四半期単位で業績でも時価総額でも、GREEとDeNAが抜きつ抜かれつでしたね。ちょっとしたお祭り騒ぎやった。