グリーの猛追がDeNAのステージを変えた
村上:DeNAは何度か大きなステージチェンジを経験していますよね。
朝倉:コバケンさんがDeNAに入ったのは?
小林:2009年です。入社する前の6四半期はほぼずっと利益が横ばい、という厳しい状況でした。
朝倉:あの頃はメインのビジネスはもうビッダーズではなかった?
小林:モバゲーです。当時はアバターの成長が鈍化して、「次の成長エンジンはどうするんだ」ということが問われていた時期。ちょうどそんなさなか、グリー社が上場したんです。グリー社はTVCMを積極的に展開するなどして急激に会員数を伸ばし、2009年7-9月の四半期に、ついに営業利益でDeNAを抜いた。
ウィナーテイクスオールの事業だと考えていたので、ここまで猛追されたことのショックは大きかったですね。頭をよぎったのがMyspace対Facebook。このタイミングで急激に危機感が上がったんですね。
だからDeNAのステージを変えた原動力は、実は競合を明確に意識したことでした。走っていたらいつの間にか横側に「えっ!!」みたいな感じでグリーの姿が見えたというのが非常に大きい出来事だったと思います。
村上:確かに、競合を明確に意識すると、戦略やサービスなど、ひとつひとつを比較し出しますし、負けているポイントが気になり出す。
例えば、「うちのサービスの方が利用者の満足度が低いんとちゃうか?」もそうだし、相手がM&Aをやり出したら、「うちもやらんとあかんのちゃうか?」とか「相手はたくさんキャッシュ持ってるけど、うちは持ってないんとちゃうの?」とか。
小林:DeNAとGREEの場合、両社がプラットフォームとして完全に並び立っていたわけで、お互いのことは本当に強く意識していたと思います。プロダクトや事業はもちろんのこと、採用の動向なども強く気にしていましたね。
朝倉:確かに、同じ事業領域にいるネット企業で、ひたすら相手のUIを意識してサービスを開発しているな、と見受けられるケースなんてよくありますよね。ほぼ丸パクリやんかと(笑)
今だとSnapchatに対するFacebook傘下のサービス群がその極致ですね。
村上:その意味だと、10年以上前の競合環境の認識の仕方って、本当に近いところばっかりを意識していたと思うんだけど、この10年、15年で圧倒的にプラットフォームを築いた会社が横展開したり、異分野に進出したり、大きな資本を持った人が入ってくることが増えたじゃない?だから今から思えば、当時のネット系企業も、競合をもっと広く捉えるべきだったはずなんだけど、どうしても直接的な競合ばかりを意識してしまいがちなのが難しいところだよね。