通訳もいない!
ボディタッチで仲良くなる!?

野島:そういうことがあって、2012年の11月11日に行われる、2000回記念公演の千秋楽に出ることが正式に決まりました。それで、練習に入ったんですが、通訳はつかなかったんですよ。

演出家の方は日本版公演で、日本に来ていたのでカタコトの日本語はしゃべれましたけど、ホントにカタコトです。「みぎ、ひだり。それでいい」とか。そんな感じです。

Yumi:じゃあ、コミュニケーションはどうしていたんですか?

野島:基本的にボディランゲージですね。身振り手振り。あとは僕の公演のとき、日本の観客のために、日本語の字幕を出してくれていたんですが、その字幕を作成していた韓国人の女性スタッフに、わからない単語を聞いたりして。

Yumi:精神的にきつそうな現場ですね。

野島:それが、実はそうでもなくて。もうホントにわからないと、自分から心を開いて、相手に頼るしかないんですよね。それで演出家に「同じ人として、もし意見が違うなら、体温を感じなさい」って言われたんですよ。

Yumi:体温??

野島:困ったら、話しかける代わりに、すっと腕を取ってその人に頼るんです。

Yumi:え~、ボディタッチですか。

野島:はい(笑)。僕は演出家の方のアドバイス通りに、困ったら近くにいる人の腕を取って、目で「言葉が分からない」とか、「どうしたらいい」とか、訴えかけていました(笑)

Yumi:普通の人には、かなりハードルが高い気がするんですけど。

野島:韓国の人って基本的にボディタッチが多いじゃないですか。それに、本当に言葉がわからないときって、なんでもやりますよね。たとえば、小道具を右に置くって言われてもわからない。

それで、近くにいる人の腕を取って、指で確認しながら「この小道具はここでいいのかな?」「それともこっち?」とか身振り手振りで聞くんです。

Yumi:ああ、はなしかける代わりに、腕を取るんですね。

野島:そうですね。そうじゃないと「自分に聞かれているのか」ってわかんないですよね?
「あなたに頼ってます」ということを、体温を通してわかってもらうしかない…。

Yumi:確かに、韓国では変な意味でなく、ボディタッチが多いかも!握手、ハグは確かに多いです。私の本にも書きましたが、韓国の人たちと仕事するときには、必ず握手します。それで距離が近くなるんですよね。でも、嫌がったりされませんでしたか?

野島:いや、みんな親切でしたよ。こっちから腕を組みにいくと「腰が引けている」とか、「仲良くなれそう」とか、わかるんです。逆に最初は「え?」と思われても、すぐにバリアみたいなものが溶ける人もいるんですよね。

(第3回へ続く)

野島直人さん対談【2】通訳もつかずにたったひとりで韓国のミュージカルに主演Yumi
年間約150本以上、動員数で言えば年間30万人以上の韓国関連イベントのMCなどを務める。歯科衛生士、裁判所の法廷通訳、北新地でバー経営という異色の経歴を持つ。関西でラジオDJ、テレビのリポーターやMCなどを経験後、韓流ブームと共に、イメケン揃いのスターのMC、通訳などを担当、女性ファンから慕われている。また語学スクール『ウリアカデミー』にて韓国語講師をつとめ、自身のトークライブ「Yumiサロン」を不定期に開催、歌やドラムなどマルチに活躍。著書に『初対面でも盛り上がる! Yumi式会話力で愛される29のルール』他 ツイッター @Yumi_nuna