日本電産、永守会長の巧みなステージチェンジ

村上:日本の会社のステージチェンジに関する好例を挙げると、日本電産の永守会長。素晴らしいじゃないですか。昔からめちゃめちゃM&Aしてるんですよ。
今でこそ数兆円ですけど、20年前の小さい会社のときからM&Aの活用者として名を馳せていて、その当時のM&Aの案件ってすごく小さいんですよ。数億未満とか。

朝倉:数億未満!?

村上:僕がもうひとつすごいと思うのが、永守会長のステージチェンジへの意識。
日本電産がM&Aを活用しだしたのは20-30年前だと思いますが、その当時のモーター業界における日本電産の存在感って、小さくて、大きなリスクを取るべきでないフェイズだったと思うんです。だから、とにかく安く買って、自分たちが一番オペレーションがうまいから、オペレーションでレバレッジして最大化する案件ばっかりやってたんです。
最近では1000億を超える案件もやり始めている。けれど、今はもうモーターでシェアを取ったので、大きなものをやる際のリスクが相対的に下がっている。この「勝ってるフェイズなんだから、1000億で大きく成長できるなら資金を張るべきだ」という感覚をお持ちなのは凄いなと思いますね。
永守会長は、「やるならこれくらい」っていう感覚が、全てにおいてステージが違う中、適切にリスクを取れている感じがする。事業のシェア、存在感でのステージ、財務的なステージ、自分たちのM&Aのステージ、いろんなもののステージの違いをうまく意識しながら、適切な打ち手を打っているというところで、僕は永守会長がステージチェンジを常に意識しながら経営なさってるんじゃないかなと思ってますね。

朝倉:そう思うと、細かい案件を短いサイクルで行っている、じげんの平尾丈社長も、ひょっとしたら同じような感覚を持っているのかもしれませんね。