骨太起業家・天狼院書店店主の人生を変えた本
来たる7月19日に発売される、HILLTOP株式会社代表取締役副社長・山本昌作氏の処女作『ディズニー、NASAが認めた 遊ぶ鉄工所』は、担当編集の私にとって20作目の処女作となる。
処女作とは著者の初めての本。
これまで私は、「処女作はその後の著者の運命を決める」と、並々ならぬ想いで処女作にのぞんできた。
そのなかでも、ずっと忘れられない2冊の処女作がある。
●敷地面積1坪、羊羹ともなかの2品で、年商3億円。吉祥寺・小(お)ざさ社長・稲垣篤子著『1坪の奇跡』(2010年12月刊)
●人口4700人の町でおはぎが1日2万個売れる、ミニスーパー主婦の店「さいち」社長・佐藤啓二著『売れ続ける理由』(2010年9月刊)
『1坪の奇跡』ほど心に残る本もない。
この本を読んだ三浦崇典氏(当時、芳林堂書店祐天寺店勤務)は天狼院書店を起業。東京以外にも福岡、京都に出店し、快進撃を続けている。
『1坪の奇跡』と出会った時の感想を、三浦氏は「僕が『1坪の奇跡』を読んで15坪の本屋を開いた理由」と題した記事でこう語っている。
起業して、最初の起業資金を綺麗さっぱりとなくしてしまい、借金だけ残されていた僕にとって、この本は最後の希望のような本だった。
豊かな社会の中で、一人、戦場にいるように生き残ろうともがいていた僕に、この本の中の言葉が、突き刺さった。突き刺さり、心まで染み込んできた。
(中略)
「なければ頭をつかえばいい」
この本にあった一節を信じて、僕はお金がまるでないにもかかわらず、2013年9月26日に、東京池袋に15坪の小さな書店「天狼院書店」をオープンさせた。
生きていくために、僕は書店を開いた。
それ以来、僕にとってこの『1坪の奇跡』が経営の教科書となっている。この本に書いてある、ことごとくを信じた。信じ切って、実践した。
(中略)
もしかして、「奇跡」とは、輝きに満ちた未来から逆算して必然という「定点」を打ったときに、その始まりとなった日常の「定点」のことを言うのかもしれない。
僕と天狼院書店にとって、その「奇跡」に当たるのが、この本『1坪の奇跡』との出合いだった。
もし、あのとき、『1坪の奇跡』に出合わなかったら、おそらく、きっと、いや、絶対にだ。絶対に、天狼院書店は、今のように生き残っていなかっただろう。
多くの社員たちを背負うことができなかっただろう。
僕はきっと、暗闇に取り残されていたに違いない。
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一人の骨太起業家の心を震わせ、人生を変えた本。
編集者として、こういう本を世の中に届けられたことを、心から幸せに思う。
いまも1年に1回、著者の稲垣篤子さん(1932年生)、装丁の石間淳さん(以前、小ざさでアルバイト経験あり)、三浦さんで、吉祥寺ランチをする瞬間が至福のひと時。
こういう本を1冊でも多く出したいと思っている。