IS対策に応用可能性も
国連も注目しているオウム

 現行の司法制度では、病気によって「心神喪失」か「心身耗弱」だったと認定されれば罰されなかったり減刑される、というシステムですが、そもそもマインドコントロールされた状態は、病気とは異なります。病気でなくとも、人はマインドコントロールによって、恐ろしいことをやってのけてしまう。これは、ISのテロリストもまったく同じだ、ということが、最近の研究で分かってきました。テロリストたちがISの過激思想から脱するのを支援するために、オウムの事例が参考になるのではないか。国連はそう考えており、実際に私にも研究要請が来ました。

 しかし、今回死刑になった麻原以外の6人について言うと、私が心理鑑定できたのは井上嘉浩のみ。しかも時間は1回30分で、横で刑務官がメモをしていたりと、自由に話せる環境ではありませんでした。ほかの人には心理鑑定はできませんでした。基本的に裁判所は「心理鑑定は不要」というスタンスだったのです。

――つまり、裁判所はマインドコントロールへの理解が欠けていた、と。

 心神喪失、心神耗弱には当てはまりませんからね。「自らの意思で犯行をした」と見なされたのです。オウムのマインドコントロールを解明するためには、彼らの協力が欠かせません。今回、死刑が執行された井上は以前、「ちゃんと話したい」と言ってくれていましたが、その機会は永遠に失われてしまいました。同じく死刑執行された中川智正も手記を出すと言っていましたし、彼らにはまだまだ、語ってもらわなければならないことがありました。

――マインドコントロールがいまだに解けていない人もいます。

 17年間も逃亡した末に逮捕された高橋克也(無期懲役が確定)は、信仰に変化がないようです。今回死刑が執行された遠藤誠一は揺れていました。死刑が確定した後は会えなくなるので分かりませんでしたが、遺体がアレフに移送されたことを考えると、おそらく本人の中でオウムへの揺り戻しが起きたんでしょう。

 さっきお話したように、マインドコントロールされると、本人が自分の意思で信じ込んでしまいます。洗脳は強制ですから、時間が経てば剥がれ落ちていきますが、マインドコントロールに時間は関係ない。私たちは「一人オウム」と呼んでいますが、アレフなどどこにも属していなくても、心の中で信仰を続けている人も少なくないのです。