オウム真理教には、高学歴者が次々に入信し、凄惨な事件を引き起こした。「なぜ?」に答える1つのキーワードが「マインドコントロール」。脱カルト協会代表理事で立正大学心理学部教授の西田公昭氏に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 津本朋子)

オウム拡大に貢献した
マインドコントロールとは何か

元幹部6人とともに死刑執行された麻原彰晃文化人や学者、タレントなど、多くの著名人が麻原彰晃を持ち上げ、マスコミがこれを報じたことが、オウム信者を増やす一因にもなった Photo:Natsuki Sakai/AFLO

――高学歴で「頭が良い」とされる若者が大勢入信し、恐ろしい事件を次々に起こしたオウムですが、彼らがハマってしまったマインドコントロールとは、何だったのでしょうか?

 拷問や薬物使用などで、強制的に精神構造を変えさせることが洗脳であるのに対して、マインドコントロールはもっと洗練された手法で、「本人自身に信じ込ませる」ためのものです。具体的には、話にウソを混ぜたり、真相を隠すことや、後戻りできないように全財産を寄附させたり、人間関係や仕事をすべて断ち切らせて出家させるなど、さまざまな手段があります。

 また、これは多くの宗教学者や社会学者、マスコミも誤解しているポイントですが、マインドコントロールは必ずしも教団との出合いや入信時にだけ行われるものではありません。むしろ、オウムの前半期には、勧誘行為はかなり雑というか、それほど巧妙なものではなくて、「麻原の著書を読んで興味を持った」というような人も大勢いました。

 信者になった後に、「違法な行為でも躊躇せず実行する」ほどに盲従させたり、「絶対に脱会しない」ほどの信念を築かせるなど、オウムは入信後に信念を強化させ、それを維持する目的でもマインドコントロールを行っていたのです。

――今回、死刑執行された元幹部たちが、「コントロールされていた」のか、それとも「自発的にやった」のかは、今も議論が分かれています。

 私は、彼らが「自発的に犯行に及んだ」とは考えていません。脱カルト協会では今年3月、死刑が確定した松本智津夫(麻原彰晃)以外の12人について、無期懲役に減刑するように求める要請書を上川陽子法相に提出しました。弟子たちは、麻原にマインドコントロールされたロボットだったと思います。