野党の機能とは何か

 時には、議論を次の国会まで延長させて、その間メディアなどで議論をさらに熟させて、攻撃のポイントを増やしていく形に持っていくことも野党の大事な役割でしょう。そんな中、野党が内閣不信任決議案を提出するシーンをよく見かけます。どうせ通らないのに、なぜそんなことをするのか、疑問に思う人もいるでしょう。
 内閣不信任決議案が提出されると、メディアはなぜそれが出されたのかという説明をしなければならなくなります。つまり、閣僚が出した法案に穴があることを国民に伝えるための手段が内閣不信任決議案です。

 これらはよく、国民向けのパフォーマンスだと批判されます。しかし、政治家が国民にパフォーマンスをしなければ、メディアは「画」として取り上げませんし、国民も細かな法文に興味を持ってくれない。上手にパフォーマンスを行うことで問題点に注目を集めることがなければ、ただただ目の前で法案が通ることを許すことになるわけです。
 たとえばプラカードを掲げる。牛歩戦術を使って時間稼ぎする。フィリバスター(議事妨害)を行って時間切れを待つ。委員会を欠席することで審議拒否=不信任の姿勢を示す。与党はその議席数を使って、審議時間が一定程度に達すれば、その期間をもって「もう十分審議した」と法案可決に運ぶことができます。それに対抗するパフォーマンスの数々が、日本だけでなくさまざまな国の議会で行われているわけです。

 野党とは、本来そういったものです。これは、リベラルと保守のどちらが与党だろうが関係ありません。日本では、政権交代の経験が少なすぎて、野党と与党のどちら側になっても通じる議会ルールの形成という観点が不十分です。保守層は与党ボケを、リベラル層は野党ボケをしてしまっている。
 与党の案に対して疑問の声を出しながらブラッシュアップをしていくことは、国会のなかでは必要不可欠なプロセスなのです。また、特定の論点が大きく取り上げられる時期には、「野党は××ばかり取り上げている」と指摘されますが、国会はいつも複数の委員会が動いており、毎年100近い法案が審議されています。また、その法案の多くは、野党も賛成しての全会一致で通っている。「××ばかり取り上げている」のは、野党というよりも、むしろパフォーマンスされた部分をクローズアップするメディアの方だと言った方が正確でしょう。
 しかし、そこにも理由があります。与党も野党も賛成で、国民の関心も薄いテーマであれば、そもそも報じても反響は少ない。与野党が大きく対立している議論だからこそ、メディアは大きく報じるわけです。