「学び」を「気づき」に変える
ディズニー流トレーニング

『人事こそ最強の経営戦略』
南和気さんの新刊『人事こそ最強の経営戦略』

 ディズニー社の人材育成というと、現場のキャストの育成が注目されがちですが、ディズニー・ユニバーシティの育成プログラムは、様々な従業員を対象に設計されています。

 前述したマイケル・アイズナー元CEOは、確かにディズニーの財務状況を劇的に改善しましたが、一方で、非常に強いリーダーシップの下で、組織間の連携不全を起こしていました。

 1989年には『リトルマーメイド』というヒット作を生み出したものの、関連商品の売り上げは不調でした。ディズニー社が元々持っていた、事業間の連携による強さが失われていたのです。

 そこでディズニー・ユニバーシティでは、エグゼクティブ対象のトレーニングが開発され、7日間のトレーニングの間、エグゼクティブたちは、着ぐるみを着てテーマパークで働いたり、映画の脚本を読んでどの映画にGoサインを出すべきかを判断したりといった、ディズニー社の現場で行われていることを体験し、同時にその課題も身をもって理解したうえで、解決策を考えるというトレーニングが行われました。

 まさにインサイドアウト型のトレーニングそのものであり、トレーニングの価値が「学び」そのものよりも「気づき」を得ることにあると教えてくれています。

 最後に、ディズニー・ユニバーシティの創設者であるヴァン・フランス氏が、人材育成の目的について語った言葉を紹介したいと思います。

「働く人間が、自分の仕事と職場に誇りを持てるようにする。ディズニーランドは顧客と従業員の両方がほかのどこにもないサービスを経験する場所だ。自分はないがしろにされていると従業員が感じて、仕事がおろそかになるようでは、ハピネスを創造することなどできない」 (『ディズニー大学』[ダグ・リップ著]より引用)

 ディズニー社の卓越した人材育成の根底には、「人材育成の場を通じて、企業が従業員を信頼し、最高の学ぶ環境を与えることが、顧客に卓越したサービスを提供するための礎となる」という哲学があり、この一貫した人材育成が継続されていることが、ディズニーの強さそのものになっています。