「幸せ」とは、今の自分に満足すること

「100万部のベストセラーは、どう生まれるのか?」【本田健×佐々木圭一】本田健(ほんだ・けん)
作家
経営コンサルタント、投資家を経て、育児生活中に作家になるビジョンを得て、執筆活動をスタートする。「お金と幸せ」「ライフワーク」「ワクワクする生き方」をテーマにした1000人規模の講演会、セミナーを全国で開催。著書は、100万部を突破した『ユダヤ人大富豪の教え』(大和書房)など、著書は130冊以上、累計発行部数は700万部を突破している。2017年にはアメリカの出版社Simon & Schuster社と契約。初の英語での書下ろしになる著書はヨーロッパ、アジアなど世界25ヵ国以上の国で発売されることが決まっている。(Photo by 森藤ヒサシ)

佐々木:取材旅行を通して、強く印象に残っていることを教えていただけますか?

本田:もっとも衝撃を覚えたのは、「ブータンの人は、一見しただけでは、幸せそうに見えない」ということでした。

佐々木:「世界一幸せな国」と言われているのに、ですか? それは意外ですね。

本田:向こうに行くまでは、「ブータンの人は、みんな明るくてノリが良い」と思っていたんです。僕が「ハロー!」と声をかければ、「ハーイ!」とハイタッチでもしてくるのかと思ったのですけど、まったく、そんなことはなくて……(笑)。
 ようするに、ブータンの人の「幸せ」というのは、浮ついたものではなくて、「今の自分に満足している」ことであり、「未来に不安がない」ことだったんです。

アメリカン・ドリームのような、「一攫千金を狙う生き方」とか、「物質的な豊かさを求める生き方」は、際限がない。ひとつの満足が次の欲望を生み出し、いつまでも満足できません。
 でも、ブータンでは、総じて競争意識が低くて、他人を出し抜いてやろうとか、他人を押しのけてでも自分が前に出ようとする人が少ないんです。「競争がないことは、すごく人を安心させる」「競争意識や損得関係の中に、人の幸せはない」ということにあらためて気づくことができました。

佐々木:僕は、コピーライターをしているせいか、本を読んでいるときも、「この著者は、こういう言葉を使って、こういう締めくくり方をするのか」と、文章を客観的に見てしまうクセがあるんです。でも、『大富豪からの手紙』を読んでいるときは、違いました。ページ開いた瞬間から主人公の敬に感情移入できたし、没入できたし、まるで敬と一緒に手紙を開いたり、敬と一緒に旅をしているような感覚を覚えました。
 敬は、旅の途中で、「ノイ」という「チェンマイ美人」と出会い、しだいに心を通わせていくようになりますが、この「ノイ」は、実在する女性なのですか?

本田:モデルになった女性がいます。僕が20歳のときに知り合ったフィリピンの女性です。当時僕は、フィリピンでボランティアをしていたのですが、現地で通訳をしていた女性です。

佐々木:だからリアルなんですね。本当に生きている人物がそこにいるように感じましたから。
 これは聞いていいのかわからないのですが……、ということは、本田さんもフィリピンで、敬とノイのような、切ない別れを経験したのですか?

本田:……(笑)。それは、ご想像におまかせしますね。

<第2回へ続く>