ホグウェイのカフェ
ホグウェイの中にあるカフェ

 アムステルダムから南へ車で20分ほど、ヴィープル市に建つ定員152人の介護付き集合住宅である。居室は24のユニットに分かれ、それぞれ都会派、手作り派など同じライフスタイルの高齢者が同じユニットで暮らす。認知症ケアの理想型だろう。

 加えて、野菜や地ワイン、高級紙パンツが並ぶスーパーマーケット、カジュアルなレストラン、音楽や調理のクラブ活動室、噴水の周りで寛ぐ入居者や来訪した家族―――。実に巧みに街並みを作り上げた。

オランダの病院死は30%
入居後2~3年で「老衰死」「自然死」が常識

 こうした環境作りと並んで見逃してはいけないのが人生の幕引きについてだ。死のあり方である。世界の先進国の中で病院死が最も少ない国がオランダ。日本人の75%は病院で亡くなる。欧州諸国の病院死はほぼ50%。その中でオランダの病院死は30%を切り断然トップである。

 在宅医療と在宅介護が浸透しているので、入院しなくても穏やかな死を迎えられる。もちろん苦痛を伴う延命治療は選択肢にない。医療介護関係者だけでなく、国民の間では「老衰死」「自然死」が常識。死の日時を自分で決めて家庭医に助力を頼む安楽死を世界で初めて法制化した国でもある。自己選択、自己決定へのこだわりは強い。家族や医療者でなく個人の意思が尊重される。

 高齢者施設でも、こうした自然死の受け入れは当然ことだ。各施設で「昨年、何人の方が亡くなられましたか」と聞くと、かなりの数字が挙がってくる。「えっ、これほど多いの」と驚かされる。

 冒頭に記したコアダーンでは、入居者30人のうち20人が昨年中に旅立った。デンハーグ市で大手事業者、フローレンスが運営するグルデンハウスでは、137人の入居者のうち毎年50~80人が亡くなる。開設して3年しか経っていないリートフェルトでも、150人の入居者のうち昨年だけで37人が世を去った。ロッテルダムの大手事業者、ローレンスの5階建て介護施設、ドゥ・ホフステイでは昨年60人が亡くなった。入居者は196人である。

 入居後、2~3年で亡くなるのが通例。施設は人生の最終段階を過ごす場ということだ。