アマゾンが手掛ける小売り以外の企業
その頃までは、「オンラインで書籍の販売を中心に、CDやビデオ、家電なども取り扱っているネット通販企業」という程度だ。
しかし、その後のアマゾンは地球上のあらゆる商品を扱うという姿勢を貫き、それを実現してきた。小売りで扱う商品以外のものも「売る」ようになったのだ。
アマゾンが手がける小売り以外の事業をざっと見てみよう。
まず筆頭は、AWSである。アマゾンの事業の中で特筆すべき事業と言えよう。
これは、自社のサイト運営のために開発したシステムを、他社が利用できるクラウドサービスとして外販しはじめたものである。
そのAWSはいまや世界シェアの3割以上を握っている。それまで、クラウドサービスの本家本元は、IT専業のマイクロソフトとネット専業のグーグルだった。
本来は小売業のはずのアマゾンが、今やクラウド業界で最も大きな勢力だ。ちなみに、日本のIT各社もクラウドサービスを提供しているが、その規模は全世界に設置されているアマゾンのデータセンター1ヵ所の十分の一にも及ばない。
アマゾンのオリジナルコンテンツへの投資額は、大手のテレビ局よりも大きい
アマゾンの「プライム会員」用のサービスである、ドラマなどのオリジナルコンテンツとスポーツの配信も大きい。
アマゾンのオリジナルコンテンツへの投資額は、アメリカの大手のテレビ局よりも大きいといわれている。
また、アメリカンフットボールのNFLとは、年間10試合のリアルタイム中継の契約を結んだ。アメリカ人にとってのフットボールは、日本人の相撲や野球好きと比べる向きがあるが、その何倍もの市場規模だ。国民的に「熱狂」しているのがフットボールだといっていい。
NFLは、現在アマゾン以外にも4大テレビ局とも中継の契約をしているが、じつはその4社とは2021年に契約が切れる。テレビ局が「アマゾンによる死者リスト」の群れに入る日がやってくるかもしれない。
また、アメリカの動画コンテンツ事情は、日本とは少々違う。地上波のドラマを見ている人などほとんどいない。
ケーブルテレビや、ネット配信などで無数にあるドラマの内、人気のあるドラマには、一話単位で★評価がつき、それを基準に視聴するドラマを決めているからだ。
アマゾンプライム会員になると、NFLと、高評価のドラマが無料で見られるとあればどうであろうか。
投資調査会社のモーニングスターは、近い将来アメリカ国内でのアマゾンプライムの加入世帯数は、ケーブルテレビと衛星放送の加入数合計を上回ると予測している。
現在アメリカ国内のプライム会員は8000万世帯だが、これからも増えていくだろう。
アマゾンは、テレビ局にとっても脅威なのだ。2017年には、オンラインだけでなく、実店舗の本格的な運営にも進出を決めた。