思い立ってすぐ言うのは子ども
TPOをわきまえてダジャるのが紳士

 この「タンスにしまっておく問題」については長くなるので、項目として改めてがっつり解説するとして、こうして飲み込んだダジャレもしくはダジャレ的要素を含んだ言葉の相似形を、よきところで出してくることで、流れに乗った雅(みやび)な会話が成り立っていく。似た言葉を見つける「インプット」と並んで、ここで出すぞという「アウトプット」のセンスも、ダジャレ力の根幹を成すものなのです。

 思い立ったからといって、嬉しくなってすぐに言うのははしゃぐ子ども。すぐ言うか、そっとしまっておくか。TPOをわきまえてダジャってこそイケてるダジャレ紳士として認めてもらえるのです。つまりは、がっつくんじゃないよと。

 わかりやすい実例を挙げましょう。昨年「TPP」が話題になりました。このような、お初で聞いた言葉への反応が、ダジャレ体質=見立て体質かどうかがわかるバロメーターとなります。

 僕はニュースで聞いたときすかさず長渕剛の顔とこの歌が思い浮かびました。「♪ティ~ピ~ピ~ ティ~ピ~ピ~ ティ~ピ~ピ~…ろくなもんじゃねえ!」おそらく日本中で何万人もがまったく同じことを思っていたはずです。実際ツイッターで僕とかなり感覚の近いダジャレ盟友がすかさずツイートしていました。

 ここまで音が似ていると、かなりの確率で脳は結びつける作業をする。日頃から見立て的な暮らし、物の見方をしていると、新たなものを見ると似たものがないかと勝手に脳が動く感じ。「思い浮かべる」という能動的なものではなく、受動的に「思い浮かんでしまう」のです。

 こうして図らずも思い浮かんでしまったこのネタ。その場で言っても、まあ、そこそこ面白がってくれたりは、します。しますけれどもあなた、これに甘んじていては、ダージャリストとしては凡庸と言わざるをえませんよ。

 ちなみに僕はカミさんとテレビ見ていて思いつくことが多く、TPPもそうでした。そんな時はまず一度口にします。カミさんは聞き流し歴20年なのでもはやダジャレは空気ぐらいにしか感じていないので……。しかしこれは油絵描くことに置き換えればクロッキーのようなもの。自分で輪郭を確かめるための習作ですね。