都市ガス業界最大手の東京ガスは、中期経営計画で成長戦略の一つに海外事業の拡大を打ち出した。しかし、計画達成への道のりは険しい。(「週刊ダイヤモンド」編集部 堀内 亮)

 鉄壁の守備と手堅い経営が身上の東京ガスが、珍しく攻めに転じようとしている。2017年10月に発表した中期経営計画「GPS2020」で、海外事業を成長戦略のドライバーに位置付けたのだ。

 主力であるガス事業の営業利益の構成比を17年度の70%から50%に引き下げるのとは対照的に、海外事業の営業利益を17年度の77億円から20年度までに260億円に伸ばす野心的な目標を掲げている(図(3))。

 エンジニアリング事業の一部も含めた海外事業への投資額は、過去最大規模の3000億円以上に及ぶ。同社の佐藤裕史財務部長は「退路を断って、海外事業へのアクセルを踏み込む意味を込めた」と語る。

 成長ドライバーを海外に求めた理由は、ガス事業の先行きが不透明であるからに他ならない。

 これまで、東ガスは肥沃な首都圏市場で家庭向け都市ガス事業を独占してきた。そのおかげで約1150万件という強固な顧客基盤をつくり上げ、盤石の財務体質も築いた(図(1))。

 しかし、創業以来130年以上続いた平和な時代は終焉を迎える。17年4月、ガス小売り自由化がスタートし、顧客を激しく奪い合う大戦国時代に突入したからだ。