「さらに、ここにはもう1つの本質的な教訓がある。
 自分の価値観は個人のものだから他人に強要しないこと。
 そして、一番大事にしている価値観があったら、それを否定するかしないかで人間関係の本質がわかる

『天国おじい』には、使い古した財布を長年愛用されている雨宮さまが登場しますが、なかにはその財布を見て、
「そんな財布よりも新しい財布を使ったほうがいい」
 と言ってくる人もたくさんいたそうです。

 それに対して雨宮さまは一言。

「でも、それは私の流儀ではない」

 なぜなら、その財布にはたくさんの想い出と奥さまからの愛情が詰まっており、自分の成功を支えてくれる人を大事にする意識が「使い古した財布を使い続ける」という価値観になっているからです。

 だからと言って雨宮さまは、他人にも「あなたも財布を使い倒すべきだ」と強要するわけではありません。
「自分が一番大切にしている価値観を否定するかしないかで付き合うべき人を決めている」
 とも教えてくれたのです。
 成功には「どんな仕事をするかよりも、誰と一緒に仕事をするかが大切」とは言いますが、そういう価値基準を持っているのもお金持ちの方々の特徴です。

 不思議なことに、価値観の相違によるクレームを言ってくるお客さまに限って、なぜか繰り返し同じホテルにお越しなります。
 初めは毎回繰り返し同じクレームが起こるのですが、やがて徐々にそれもなくなり、お互いに良好なコミュニケーションが取れるようになって、ステキなリピーター様に変わるのです。

 それは、そのホテルではお客さまが自分の価値観を否定されなくなるからなのでしょう。
 もしかしたら雨宮さまが言うように、ボクには知りえないお客さまなりの深い理由があってのクレームで、それが本当の関係性を判断する基準だったのかもしれません。

『天国おじい』に登場する渡辺さまが言うように「結果が出ない価値観は疑う」とともに、雨宮さまが言うように「大切な価値観」は大切にしたいものです。