もっとも、現実に「専業主婦家庭の呪縛」が存在する以上、「年収600万円の壁」の存在と共に、未婚率の上昇に影響しているだろう。

(6)育児コストの上昇

 結婚は、子どもを持つ事とセットで考えられることが多い。ところが、勤労者所得が伸び悩む一方、教育費が上昇を続けていて、子ども1人当たりの育児コストの負担は家計にとって重くなる方向に変化している。

「子どもを持つとコストが大変だから、今、自分が子どもを持つのはいいことだと思えない。そして、子どもを持たないなら、結婚する必要はない」という思考回路を通じて、結婚へのインセンティブが減少する。

 子どもを持つ事に対してポジティブな感情を持つ独身者はかなり存在すると思われるが、現実に持つかどうかは、持つことのコストに影響される。結婚せずに子どもを持つという選択肢がないわけではないが、今の日本の社会の仕組みと世間の価値観を前提に考えると、少なからず「不便」な場合があるのが現実だろう。子どもと結婚を結びつけて考えることが十分あり得るとすると、子育てコストの上昇は結婚減少のコスト面からの理由になり得る。

結婚が減ることは合理的か

 今回、「日本で結婚が減る理由」をあれこれ考えると、未婚率の上昇は、概ね合理的な選択の結果ではないかと思われる。少し寂しい気がしなくもないが、個人の選択に介入するのは「余計なお世話」だ。

 ところで、世間的には、少子化対策として、結婚を奨励しようとする向きがあるようだ。確かに、結婚する人の比率が上がると、出生率は上がりやすいだろう。

 しかし、結婚するかしないかは「結婚に関する」個人の選択の問題であり、子どもを増やしたいということなら、結婚していなくても子どもを産み・育てることができるような制度と環境を整えるのが本来の対策だろう。

 例えば、民主党政権(最終的には悪夢のようだったが)の初期に提唱された大規模な「子ども手当」は、いわば「子育て世帯向けベーシックインカム」のような政策であり、効率的でフェアな再分配の手段としても、子どもを産むインセンティブを高める政策としても大変よかったと思う。

 なお、結婚する理由・しない理由を諸々考えてみると、多くの場合、恋人どうしが同棲する選択肢が最も合理的ではないか。さらに未婚率を上げそうなアドバイスで恐縮だが、筆者はそう思う。

 経済的には、働く恋人どうしが同棲するのがいいだろうし、この場合、女性の側も(男性が主夫でもいいが)、三号被保険者になって国民年金の保険料を得しようなどといったレベルの小さな得が気にならないくらい、大いに働いて稼ぐといいと思う。

 もちろん、結婚をするのも専業主婦家庭を作るのも、当事者の自由な選択によってなされるべきことで結構なことだと思う。ちなみに、筆者個人の現状はそのようなものである。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)