Golaxyは中国・精華大学の囲碁AI「Abacus」を母体として、現在は深客科技という企業がアップグレードしている囲碁AIである。アルファ碁ゼロの発表以降、囲碁AI界では教師データとしての人間の棋譜データを与えず、ルールだけでゼロから自己学習する「ゼロ型」の開発がトレンドになった。しかしGolaxyは独自の工夫を凝らし、人間の棋譜から学習しているようだ。独特の打ち方は上位陣の中で異彩を放っていた。

 中国では企業や大学が盛んに囲碁AIを開発しており、今大会に不参加の強豪も数多くいる。その代表例が、「鳳凰囲碁(PhoenixGo)」だ。鳳凰囲碁はテンセントの看板アプリ「WeChat」部門のチームがつくった囲碁AIで、4月に行われた別の世界大会で優勝した。つまり、テンセントは絶芸、鳳凰囲碁と最強クラスの囲碁AIを二つも擁しているわけだが、それぞれが歩んでいる道が真逆であることが興味深い。

 このうち、テンセントのAIチームが開発した絶芸は中国棋院と提携し、中国のナショナルチームが活用している。

 一方、WeChatチームの鳳凰囲碁は、フリーソフトとして世界中の誰でも自分のPCにダウンロードして使うことができる。それだけではない。なんと、オープンソース化し、世界の開発者の知恵を結集して開発していく道を選んだのである。そして、世界では囲碁AIのオープンソース化が進んでいる。

囲碁AIのオープンソース化
フェイスブック復活の狼煙

 アルファ碁ゼロのようなゼロからの学習は、クリエーティブでエキサイティングであることは、開発者ではない筆者にとっても想像に難くない。しかし、膨大なマシンリソースが必要なことも事実だ。そこで、面白い試みが生まれた。「LeelaZero」プロジェクトである。ベルギー発のLeelaZeroは、アルファ碁ゼロに触発されて始まった計画だ。

 具体的にはAIのプログラムをオープンソースとして公開し、学習のための自己対戦は世界中の開発者が協力する。そのデータを集めてバージョンアップするという、まるでドラゴンボールの“元気玉”のような手法だ。

 それだけではない。フリーソフトとして活用できるのはもちろん、LeelaZeroを用いた、囲碁ファンのための検討用ソフト「Lizzie」も登場し、これがとても秀逸なのだ。これまで、囲碁AIの読み筋は人間には分かりづらい記号で示されるだけだったが、Lizzieによって碁盤上での想定図が見られるようになったのだ。AIの思考の可視化という意味で、これはとても素晴らしいツールである。

 そしてここにきて、囲碁AIオープンソース化の流れを決定づける重大な出来事があった。フェイスブックが自ら開発する「ELFOpenGo」を公開したのだ。フェイスブックはアルファ碁と同時期に「DarkForest」という囲碁AIを開発していたが、最近は音沙汰がなく開発をやめたと思われていた。

ところが2018年に入り、やはりアルファ碁ゼロにインスパイアされ、開発を再開したようだ。あっという間に強くなり、韓国トップ棋士とのテストマッチに全勝した。