「最近、多くの小売店舗で中国人従業員を見ますが、彼女たちの商品知識はあまりに乏しい。『中国人を店頭に置きさえすればそれでいい』という日本企業の発想は安易すぎるのではないでしょうか」

 一方で、急速に店舗網を広げる企業の中には、インバウンド対応のチーム構成の見直しを行うところもある。「中国人は即戦力ではあるが、すぐに辞める傾向が強い」(前出のA氏)のが主な理由だ。日本人の比率を高めることで接客の質の向上を図る狙いもある。中国社会では、リテールは大卒者が就く仕事ではないと思われていることもあり、モチベーションの維持は困難だ。

日本人の持てる力に光を当てる

 空港の免税店もインバウンドの追い風を受け、雇用を拡大させる業態のひとつである。成田空港に出店している「Fa-So-La」は、株式会社NAAリテイリング(成田国際空港株式会社の100%子会社)が運営する免税店だ。

 経営計画部経営企画課課長の原浩介氏は「空港ならではの職場ということで、さまざまな国の人とコミュニケーションをとりたい、触れ合いたいという熱い思いを持つ日本の若い人たちが集まりました」と話す。

 国籍を問わず採用を行ってきたものの、2018年4月時点で819名にまで膨らんだ社員の多くが日本人だ。同社が重視するのは従業員教育である。新規の採用も、「語学力を最初から備えている人材はもとより、その他のスキルも踏まえ、積極的な採用を行っています」(原氏)という。社内では語学を含めた研修制度が充実している。

「空港の免税店は、時間のない中での購入が大前提。瞬時にお客様のニーズを把握し、ご案内できるような人材の育成に力を入れています。日本人の持ち味である“細やかさ”、私たちはそこに自信を持って接客をしています」(同)

 他方、日本人ではわからない文化の違いを埋めるのが外国籍のスタッフだ。顧客の多くを占める中国人顧客に対し、中国人従業員は複雑なやり取りや難しいクレームなどの通訳として、あるいは社内の勉強会の講師として、その持てる力を存分に発揮している。

 同免税店では、日本人従業員がそういった環境の中で習得した中国語や英語を使って一生懸命に接客する姿が目に付く。こうしたこともあってか、「Fa-So-La」は免税店にしては珍しく、リピート客に恵まれるようになる。気持ちのこもった接客が評価されていることの証しでもある。

 求人情報サービス大手・マイナビの採用担当者によれば、「訪日中国人は日本のおもてなしを楽しみに来ているため、サービス業では中国語を話せる日本人の潜在ニーズが強い」という。

 日本には、大学の第2外国語で中国語を習得した人材や、中国への留学を終えた人材が数多くいる。日本のインバウンドにおける雇用も、若い日本の人材が夢を描ける現場になることを願いたい。

(ジャーナリスト 姫田小夏)