70歳以上の高齢者の高額療養費の見直しは、社会保障プログラム法の第四条7三の「医療保険の保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等について」で定められており、2014~2017年度までを目指して、「低所得層の負担に配慮しつつ七十歳から七十四歳までの者の一部負担金の取扱い及びこれと併せた負担能力に応じた負担を求める観点からの高額療養費の見直し」ていくことが明記されている。

 その後、2015年12月に決定した経済財政諮問会議の「経済・財政再生計画 改革工程表」で、2016年末までに70歳以上の高額療養費の見直しについて結論を出すことが求められ、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会で具体的な上限額などが話し合われた。そして、2017年度の予算案が閣議決定されたのを受けて、2段階で限度額を見直していくことが決まったのだ。

 政権交代した自民党の安倍政権によって消費税の引き上げが延期され、社会保障制度改革のスピードが鈍ってしまったのは残念なことだが、70歳以上の人の高額療養費の見直しは、社会保障・税一体改革の閣議決定から数えると、6年超の時間をかけ、法的手続きを踏んで進められてきたものだ。

 いつの間にか誰かが勝手に決めたものではなく、最終的には国民の代表である国会議員の手によって採決されている。制度改正は、きちんと法律を追っていかないと「いったい、いつ変わったの?」といったことになりがちだが、「目を離したすきに、高齢者の負担を増やした」わけではないことは知っておく必要がある。

 それに、すべての高齢者の医療費が引き上げられたわけでもない。国民会議の「報告書」には、「低所得層への配慮」という言葉が繰り返し使われており、70歳以上の人の高額療養費も、限度額が引き上げられたのは一定以上の収入がある人で、住民税非課税世帯などの低所得層の限度額は据え置かれたままになっている。

低所得層の限度額は据え置き
大幅引き上げは高所得層

 70歳以上の人の高額療養費の所得区分は、2018年7月までは、「低所得者I(住民税非課税世帯で年金収入80万円以下など)」、「低所得者II(住民税非課税世帯)」「一般(年収約156万~約370万円)」「現役並み(年収約370万円~)」の4つに分類されていた。

 このうち、「低所得者I」「低所得者II」の限度額は、据え置かれたままになっており、今後も引き上げられる予定はない。