大塚万紀子氏(左)と永田公彦氏
大塚万紀子氏(左)と永田公彦氏

永田 ある集団(国・地域・企業・家系等)に属する多くの人たちの間で共通に見られる価値観、考え方、言動、思考やコミュニケーション方法、社会構造、生活様式など広く捉えています。文化は、人が生きる環境に影響されてできるので、これまでとは違う環境に身を置くことで、変わることもあり、変えることもできます。また、自らの文化を他の集団の人たちのものと比べることは大切ですが、双方の違いについて、どちらが良いとか悪いとか、優っている劣っていると見るべき性質のものではない、と前置きしておきます。

大塚 同感です。確かに、自分と別の人との文化的な違いは善悪とか優劣じゃないですよね。

日本では、幸福度とか
充足度に対する意識が未成熟

永田 ところで、ワークとライフのバランスでは、時間もさることながら、心の充足度のバランスも大事ですよね。つまり、仕事は満足だけど私生活は不満足、またはその逆…こうなるとアンバランスです。フランスのある調査では、仕事の満足度より私生活の満足度が若干高いというデータがありますが、この点は、日本ではどうなんでしょう?

大塚 おそらく日本では、幸福度とか充足度に対する意識が未成熟なように思います。また、仕事と私生活の充足感を相関的に捉えて、そこに違いがあるのでは?という仮説すらない状況かもしれません。ただ、現場に出ている実感としては、明らかに仕事と私生活との間に相関性はあります。例えば私たちは、8ヵ月間40人あまりの人の変化を見ているのですが、ライフが充実している人はワークでも前向きです。逆に、働き方改革を最初は嫌々やっていた人も、ワークスタイルが変化することでライフスタイルも変わります。例えばお子さんとの間で問題を抱えていた方が、コミュニケーションが良くなるとか、ご両親の介護について勉強する時間ができ、私生活も仕事も充実してきているというケースが多々あります。

永田 そうなんですね。確かに、仕事と私生活での充足性に関係があるのは間違いないと思います。ただ残念ながら、日本では、私生活の充足に対する制約が多いと思います。まず、ハードな仕事や通勤からくる、時間と疲労による制約です。また、文化・芸術・スポーツ・自然を楽しむための高いハードルです。美術館、博物館、映画館、公設グラウンド、公園など文化やスポーツを楽しめる場所が少なく、しかも高い。なので、多くの人が身近なものに感じられない。また、お金をかけずに楽しもうという意識が足りない感じがします。

 例えば、日本はとても安全で四季折々の豊かな自然が身近にあります。それなのに普段から公園や近くの自然の中で、本を読んだり、人とおしゃべりやピクニックをしたり、散歩したりして楽しむ人が少ない感じがします。せっかくの週末ですら、欧米のように人の流れが自然を求めて郊外に向かうのではなく、日本、いやアジア全般といってもいいかかもしれませんが、街に繰り出しショッピングとか外食という人が多いですね。