日本の会社と働き手
主従からより対等な関係に

大塚 それぞれに特徴があるのですね。付け加えるとすると、日本人の頭の片隅に、「会社に守ってもらっているから今の自分がある。その会社に対して権利を主張するとは何事か」という感情があるのだと思います。これは、会社と働き手が主従関係にあることと、人口ボーナス期特有の事情、つまり会社は「お前の代わりなんていくらでもいるんだぞ」と言えて、本人もそこで権利を主張すると主従関係が切れるのが怖いという構図の下で成り立っていました。

 ところが既に人口オーナス期に入り、労働者の売り手市場になっている最近の日本では、この主従関係がぐらついてきています。会社側のこうした考えも弱まり、社員も会社をあてにできなっている。労働人口が減る中で、労働者が会社を選べるようになってきているため、両者の関係も主従ではうまくいかなくなり、よりフラットなものになりつつあります。

永田 社会環境の変化によって、主従からより対等な関係に変わるということですね。ただ、これが今後、欧米のように不可逆的なものになるかどうかです。ご存じの通り、欧米では、長い歴史の中で脈々と育まれてきた人権思想が文化的基盤になっています。17~18世紀に英仏で生まれ、市民が血を流し勝ち取ってきたものです。その人権をベースに、個人と組織(会社や地域)は、契約で関係が成立してきました。契約は双方合意で成り立つので、その根底には平等とか対等の関係という精神が流れています。

 一方、日本では、歴史的に働く者の権利も含め、人権について確固たる文化的基盤を確立してきたとは言い難い。このように欧米とは文化的な根っこが異なる日本で、人々の間に、人権やそれにひも付く権利意識とか対等の契約関係意識は育つのか?それとも、今のフラット化現象はひ弱なもので、仮に景気の悪化や外国人労働者の増加等で労働市場が逆転し買い手市場になった場合、また元の主従関係に戻るのか?という点、またこれを不可逆的なものにするにはどうしたらいいのか?という点について、どうお考えでしょうか。

大塚 それは、すごく面白い視点です。いつも考えるのですが、文化を変えること自体はできると思います。ただ、「皆さん文化を変えましょう!」と声をかけても、程遠い話になってしまう。なので、私たちは、「人間はロボットと違い、何かの行動をする時に目的を内発的につくり、それに向かい行動する」という、人間の人間たるゆえんに着目しています。そこで、「自分たちにとって、より良い状態にしていくためには、何をどう変えていくべきか?」という、わかりやすく具体的に話ができるテーマを元に、皆さんと議論を重ねます。これによって個々の目的が見えてきて、その目的をかなえるためには、自分たちの働き方がどうあるべきか?という答えを導きます。その結果、文化も変わり、こういう考え方もあるんだねという許容範囲も広がっていくと考えています。