それでも、世界の鉄鋼大手の業績が軒並み低迷するなかで、リーマンショック以降にいち早く回復したPOSCOを、外部要因の恩恵だけで片づけることもできません。国内や成長市場での積極果敢な設備投資、顧客との長期展望に基づく営業・マーケティング政策、年6,000億ウォンを超える研究開発の推進、コスト削減の徹底などの、マネジメント力があっての結果なのです。

新日鉄住金の誕生を、改めて考える

 新たに誕生する新日鉄住金は、粗鋼生産量ではアルセロール・ミタルに次いで世界第2位となる見込みです。もちろん、いくら生産キャパシティがあっても、それがフルに稼働する需要をつかみ、かつ適正な販売価格設定によって十分な利益が出なければ、それを優良資産とみなすことはできません。

 一説では、日産自動車がタイで生産するマーチの半分の鋼材は、POSCOが提供していると言われています。日本と韓国の国内事情や為替の違いを言い訳にはできない第三国において、POSCOと国内大手はすでに真正面から激しい競争をしているのです。

 10月の大合併によって、粗鋼生産量、ひいては規模の獲得によるコスト競争力において、新日鉄住金はPOSCOとほぼ対等な位置に立つことができます。こうした強い意志のある大合併の決断こそが、多くの日本企業にとって不可欠なのだという事実を示すべく、この合併の成功を期待しましょう。

 なお、拙著『英語の決算書を読むスキル』では、鉄鋼世界最大手のアルセロール・ミタルの決算書を、会計指標分析(Financial ratio analysis)、百分率財務諸表(Common-size financial state-ments)といったツールを使って詳しく分析しています。どうぞご覧ください。

(第3回は5月8日公開予定です)

 


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