だからこそ、3年生の春休み中に大企業を中心とした企業が集中的に採用面接して内定を出し、それ以外の企業も5月の連休明けまでに就活を終わらせることが世間相場になれば、後は学生も安心して学業に励める。内定先が早く決まった方が、それに関連した分野への関心も高まる。現行のように10月まで内定時期を引き延ばすことの方が、内定をいくつも持ちながら、より良い企業を求めて就活を続ける学生を増やす消耗戦の原因になるのではないか。

一括採用を減らし、通年採用を増やすことには高いハードルも

「新卒一括採用から通年採用へ」という新聞等の見出しは、やや誤解を生み易い。人事部が一括して採用した人材を各部局に配置する現行の仕組みは、定期的な配置転換・転勤と不可分の関係にあり、五月雨式の通年採用に変えることは難しい。

 これに対して、ポストが空く都度に採用する通年採用は、明確な職務を前提に、それにふさわしい人材を対象とした部局別採用に見合った仕組みである。欧米企業と、国籍に関わらない人材獲得競争を重視するなら、具体的な職種を提示し、それにふさわしい賃金を保証する部局別採用の比率を、より高める必要性がある。

 人事部が新卒者を一括採用し、どの部局にでも配置でき、かつ定期的な人事異動の対象になるためには、画一的な人材にならざるを得ない。他方で、特定の部局別採用では、その部署に必要な高い能力を持つが、他の部局では勤まりそうもない「尖った人材」の採用も可能となる。中西会長の「単一文化でなく多様な文化の重視」は、従来の人事部による一括採用比率を減らし、部局別の通年採用の比率を高めることではじめて可能となるが、それには大きなハードルがあろう。

 部局別採用では、新卒社員だけでなく、他の企業で形成された高いスキルを持った人材への中途採用機会も広がり、雇用の流動性が高まる。他方、部局別採用の問題は、その仕事がなくなった場合の雇用の保障である。この職種や勤務地を限定した働き方は、人事部採用の配置転換を通じて昇進する正社員と比べた雇用保障の程度が低いことから、労働組合は導入に反対している。また、その仕事能力にかかわらず、契約社員等の「非正社員」に近い存在と見なされ、会社の重要な役割を担う管理職等への登用の機会が少ない場合が多い。