長安鈴木のスズキ保有分の全株を、現地合弁先の長安汽車に譲渡することで合意したと発表Photo:Imaginechina/AFLO

世界最大市場の中国から
全面撤退するスズキ

 スズキは、9月4日に中国の合弁生産会社「重慶長安鈴木汽車有限公司(長安鈴木)」のスズキ保有分の全株(50%分)を、現地合弁先の長安汽車に譲渡することで合意したと発表した。

 同社は6月、すでにもう一つの中国合弁生産である江西昌河鈴木汽車有限責任公司(昌河鈴木)の保有株(46%)を現地合弁先の江西昌河汽車に譲渡しており、これによりスズキは年内に中国での生産から全面的に撤退することになる。

 スズキは、米国でも2012年に四輪車事業から撤退しており、これにより「スズキは世界自動車市場の1位の中国、2位の米国から撤退!」と衝撃が走った。

 なぜ、スズキは米国からの四輪車事業撤退に続いて今回、中国での現地合弁生産の撤退に踏み切ったのだろうか。

 まず、中国では人気のあるクルマが中型・大型車に移行しており、スズキが得意とする「安くて小さいクルマ」の需要が低迷、スズキブランド車の販売も大きく落ち込んでいたことがある。合弁会社の現地生産も、ピーク時の2010年から大幅減の状態に陥っていた。中国の現地合弁会社はスズキの持分法適用会社であり、スズキの連結業績に影響してしまう。このため、スズキは経営判断から合弁事業の解消に踏み切ったのであろう。

 もう一つは、詳しくは後述するが、中国政府による「新エネルギー車(NEV)規制」が2019年から導入されることだ。電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の3種のNEVを、一定比率で製造・販売しなければならない。ところが、スズキは現地生産で、ハイブリッド車以外の電動車にすぐには対応できない状況にある。これも合弁解消の大きな理由と考えられる。

 さらに加えれば、スズキはインド政府との合弁、独VWとの資本提携などを巡り、さまざまなタフな交渉を繰り返してきた。こうした過去の合弁や資本提携の相手先との複雑な関係もあって、中国合弁先とも事業面で噛み合わなくなったこと、あるいはスズキ流の経営と中国合弁先のビジネスで齟齬(そご)が生じてきたことが考えられる。