サンジブ・チョプラ(Sanjiv Chopra)
ハーバードメディカルスクール(ハーバード大学医学部)教授。医師。米国内科学会最高栄誉会員(MACP)。ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(ハーバードメディカルスクール附属病院)肝臓科上級医長。毎年150ヵ国8万人の医師を教える、世界で最も学術的に優れた医師生涯教育プログラムである、ハーバードメディカルスクール生涯教育部門の部長を12年間務める。医療現場での臨床判断のツールとして世界60万人以上の医師によって利用されているインターネット上の電子教科書「UpToDate」の肝臓病セクションの編集責任者も務める。ハーバードメディカルスクール優秀教育者賞、ロバート・S・ストーン賞(ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターで医師、スタッフ、学生により選出)、米国消化器病学会優秀教育者賞、エリス島名誉勲章など多数の賞を受賞している。
デビッド・フィッシャー(David Fisher)
著述家。15冊以上のニューヨークタイムズベストセラーの著書を持つ。
櫻井祐子(さくらい・ゆうこ):訳者
翻訳家。京都大学経済学部卒、オックスフォード大学大学院で経営学修士号を取得。訳書に『CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見』『選択の科学』(ともに文藝春秋)、『OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び』(日本経済新聞出版社)、『イノベーション・オブ・ライフ』(翔泳社)、『第五の権力』『0ベース思考』『SPRINT最速仕事術』(いずれもダイヤモンド社)など。
「統計的エビデンス」からわかった驚くべきこと――訳者より
本書の著者サンジブ・チョプラ博士は25年ほど前のある日、ひとつの研究に目を奪われた。
それは膨大な統計的エビデンスをよりどころとする研究で、コーヒーを飲む人は飲まない人に比べ、肝障害を示す肝酵素のレベルが大幅に低く、しかもコーヒーを飲む量が増えれば増えるほどレベルは低くなるという、驚くべき因果関係を示唆する論文だった。
ハーバードメディカルスクールの肝臓専門医として、世界全体で患者が10億人ともいわれる慢性肝疾患の最先端の治療法を研究してきたチョプラ博士は、こんなに身近なところにカギが潜んでいる可能性に大きな衝撃を受けたという。
博士はこれをきっかけに、生活習慣や環境と病気との因果関係を推定する疫学研究に興味をもち、信頼性の高い情報を多くの人に伝えられないかと考えるようになった。
疫学研究のなかでも、とくに大規模な集団(コホート)を一定期間にわたって追跡する、時間と手間のかかる研究のことをコホート研究という。数十万人規模の集団を何十年もかけて調査することも少なくない。
対象者を選び、あらかじめ健康と関連がありそうな要因(食生活や生活習慣、環境など)を調べておき、その後健康面でどのような変化があったかを追跡することによって、それぞれの要因と病気のリスクとの関連に光を当てようとする。「なぜ」そのような関連があるのかを示すものではないが、それでもすばらしい知見が得られることはまちがいない。
とくにこの手法は、特定の要因と病気に罹患した時期の前後関係がはっきりしているため、バイアスが小さく、情報が多く得られ、因果関係を示すエビデンスとしてとくに説得力が高いというメリットがある。
チョプラ博士は、主にこうしたコホート研究とそのメタアナリシス(過去に行われた信頼性の高い複数の研究結果を定量的に統合して改めて分析する手法)をベースとする、エビデンスレベルの高い疫学研究によって健康効果が強力に裏づけられている習慣を5つ選び出した。これらを「ビッグファイブ」と名づけ、みずから実践するとともに、家族や医師仲間、患者さん、講演の聴衆に広く勧めているという。それをまとめたものが本書だ。
「これは健康にいい」という研究について、雑誌やネットでよく目にするという方は多いだろう。だが本書のよさは、ハーバードメディカルスクールおよび附属病院の高名な肝臓専門医で、医師の教育にも大きな実績があり、数々の賞によって功績を称えられているチョプラ博士が、とくに信頼性の高い研究を厳選して、お墨付きで紹介しているという点にある。
チョプラ博士自身は、本書のメソッドを「なまけ者の健康法」と呼び、シンプルな点にこそそのよさがあるという。
難しい方法や手順を覚える必要はまったくない。誰でもいますぐに取り入れて、長く続けることができる。また、すでに「ビッグファイブ」のいくつかが習慣になっているという方も、この本を読んでその効果を理解すれば、さらに効果的に継続できるだろう。
これらの習慣は副作用もない。万が一健康効果を示す膨大な数の研究がすべて誤りだったとしても損失は少ないが、仮に一部でも正しければ、ビッグファイブを取り入れないことは大きな損失になるとチョプラ博士は力説している。
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