世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。
グラスで大きく変わる
ワインの味わい
ワインの魅力のひとつが、繊細で複雑な味わいです。同じワインでも熟成期間によってまったく味は異なりますし、ボトルから注いだあとですらグラスの中で数秒ごとに味が変化してきます。もちろん、合わせる食事によっても味わいは変化しますし、サーブする温度によっても変わってきます。
このような繊細なワインを楽しむために、特に注意したいのが「ワイングラス」です。選ぶ形によってワインの味は大きく変わってしまいます。ワイングラスの形状が異なるのは、ワインの種類やぶどうの品種などにより、「香りの楽しみ方」「空気と触れさせるレベル」「適当な温度」「口への含み方」などが変わってくるからです。
たとえば、赤ワイン用のグラスは、白ワイン用のグラスよりも一回り大きくつくられていますが、これは空気に触れさせてタンニンの渋味をやわらげるためです。反対に白ワインは、冷たいうちに飲みきれるように小さめにつくられています。
また、赤と白の違いだけでなく、産地やぶどうの種類によっても適したグラスは変わってきます。たとえば、カベルネソーヴィニヨン用のグラスは楕円形で縦に長くなっています。これはタンニンが豊富で、空気に触れるほどワインが開くぶどうの特徴を生かし、口に入るまでの空気に触れる時間を長くして、より芳醇な味わいを表現するためです。
白ワイン用のグラスは口がすぼまっていませんが、これは口に含んだときにそのまま舌全体にワインが広がり、舌の両サイドでしっかり酸味を感じられるようにするためです。一方で、シャブリに代表される酸味やミネラルがしっかりしたシャルドネには、酸味を感じる舌の両サイドに直接当たらないように口のすぼまったタイプのグラスを選びます。
その他のワインでは、シャンパンはフルート形と呼ばれる長細いグラスが主流です。シャンパンの特徴である泡が綺麗に立ち上がるスタイルになっています。また、日本ではあまり見かけませんが、クープという種類のシャンパングラスもあります。
また、すべてのグラスに共通しているのが、「薄手のグラスほど、ワインを美味しく飲める」という点です。厚いグラスに注いだワインはすぐに温度が変わってしまいますが、薄いグラスはワインの温度に馴染むため、美味しく飲めるのです。