遺族は片木さんに、「イソジン牛乳を思いとどまらせてもらって良かった。当時、すでに食べ物がのどを通りづらい状況だった」と話したという。

提唱者の医師「とにかく勧めているだけだ」

 果たしてどのような根拠で、医師はイソジン牛乳を提唱し、広めているのか。2017年11月、西日本の地方都市を訪ね、話を聞いた。

 この医師は、市内にビルを構える病院の80歳代の理事長だった。専門は整形外科で、病院でがん患者を診ることはないと話した。

 それがなぜ、がんの治療法を提唱するのか。

「とにかく考えることが好きでなぁ」

 大学卒業後、研究者の道に関心があったものの、父親の経営する病院で働くために帰郷。若い頃に学んだ細胞組織学の知識を元に、様々な仮説を考えるようになったという。

 自らの考えを裏付けるための実験などは行わなかったが、1990年前後から、考えを論文にまとめ、学術誌に投稿するようになった。

「これがなぁ、さっぱり採用してもらえんのよ」

 あるとき、採用を断られたある学術出版社から、「メディカル・ハイポッセシーズ」という学術誌の名前を耳にする。日本語に直せば「医療仮説」になるこの学術誌は、医学に関連して「考えたことを書く学術誌」だと聞き、そこに投稿した。

「論文を送ったら大歓迎で」「掲載料はとられた。ナンボか忘れたけど」

 初の論文掲載が1992年。その後もメディカル・ハイポッセシーズに投稿を続け、計17編の論文を発表した。そのうち2002年に発表されたものがイソジン牛乳についてのもの。独自のがん理論に基づく治療法の提案だった。

イソジン牛乳を提唱した論文
イソジン牛乳を提唱した論文(画像の1部を加工しています) Photo by Tsuyoshi Nagano