長寿化は、働き続けられる平均的な年齢の長期化を意味している。一般に日本の男性高齢者の就業意欲は高く、先進国の中ではトップクラスで、高齢女性の就業率も急速に追い付いている。高齢者が働き、税金や社会保険料を払い続ければ、それだけ壮年層の負担は軽減し、経済成長にもプラスの効果がある。もっとも、高齢者の働く能力には個人差も大きく、早期退職の選択肢も設けることが必要だ。

 先進国の平均寿命と年金の支給開始年齢を比較すると、日本の男性の年金受給期間が16年間(女性は22年間)と極端に長いことが分かる。これは日本の厚生年金の受給開始年齢が2025年に65歳にとどまるためである。これに対して他国は67-68歳で、平均寿命までの受給期間がほぼ10年間である。日本と平均寿命に大差のない豪州では、2035年までに70歳への引き上げを2014年に決めたが、これが責任ある政府の本来の姿である。

 これに対して日本では、支給開始年齢が65歳に到達する2025年まで、それ以上の引き上げは検討しないとしているが、それではあまりにも遅すぎる。2018年2月の高齢社会対策大綱では、65歳より後に割増年金の受給を開始する繰下げ制度について、70歳以降の受給開始も選択可能とするとした。しかし、これは平均寿命まで生涯に受け取れる年金給付額を所与としたもので、年金財政の改善には貢献しない。このような目先の対応で、本質的な議論を避けようとすることには弊害が大きい。

年金給付額を削減する
「マクロ経済スライド」の問題点

 厚労省は、既存の年金給付を毎年一定率で削減するマクロ経済スライド制度を2004年に導入した。これは社会保険料の引き上げと同じで、毎年の法改正を必要とせず、自動的に適用される。国会等で紛糾する年金の支給開始年齢引き上げのための法改正と比べて、行政側に都合の良い仕組みである。

 しかし、この削減率は物価上昇率の範囲内でという強い制約があり、これまでのデフレ経済下ではほとんど機能しておらず、年金財政の悪化の主因となっている。それだけではなく、仮に現実に機能したとすれば、基礎年金にも画一的に適用されることから、低年金者にとっては大きな負担増となる、逆進性の大きな制度である。