東京医科大学の女子受験生への一律減点が明らかになった件について、女性差別の背景には、大学病院の勤務医の過酷な長時間労働の実態があることや、大学病院の人事権を司る医局が一般企業とは違う原理で動いている現状を前回(「東京医大の女性差別を医師の65%が「理解できる」と答えた真の理由」)レポートした。9月3日に開かれた厚生労働省の第9回「医師の働き方改革」有識者検討会ではようやく残業時間規制のあり方について議論が始まったが、今回はそもそも医局が人員不足に陥った背景や、女性医師に特有の状況、今後の展望などについて続報をレポートする。(ライター/奥田由意)
東京医科大学の女子受験生への一律減点を行っていた件を受け、文部科学省は全国の医科大学や大学医学部に対し、入試の実態について、緊急調査を行った。ほかの学部に比べ男子優位の傾向が明らかになったが、現時点では東京医科大学以外の全ての大学が「得点操作」については否定しているという。
文科省の調査はさらに続いているなか、実際に前回の記事で挙げたアンケートからもうかがい知れるように、女性を合格させたがらないという姿勢は多くの医学部で見受けられるようだ。その要因となっている大学病院に勤務する医師の過酷な長時間労働の実態については、前回の記事「東京医大の女性差別を医師の65%が「理解できる」と答えた真の理由」で言及した。
新たな研修「スーパーローテート」必修で
大学病院の医局から人材が流出
大学病院で、なぜ「長時間労働に耐えられる」医師が必要になるのか、前回挙げた点以外にもさまざまな理由があるようだ。
ひとつの契機は2004年に遡る。それ以前は、国家試験に合格した医師の多くが、自分が卒業した大学の医局に属し、それぞれの専門の科に配属されて、研修医として研鑽を積むのが一般的だった。内科のなかで、例えば循環器を選択した医師が、同じ内科の医局内の消化器について研修をする機会はあっても、外科や精神科の臨床研修を受けることは基本的にはなかった。