今造が値下げを迫るにはもっともな理由があった。17年度に41億円の営業赤字に陥ったのだ。官報によれば08年度以降は営業黒字を確保していたのに、である。18年度も「大型のコンテナ船など、戦略的な受注と抱き合わせのもうからない案件がある」(今造関係者)とささやかれており、船舶業界からは業績を懸念する声が聞こえる。

 果たして、大幅値下げは実行された。17年度の価格交渉に入ってからというもの、今造は「造船所を助けると思って」といった殺し文句を駆使しながら、冷徹な要求価格を突き付けているようだ。

 「市況が好転したとき、どこまで今回の協力の恩を返してくれるのか」。取引先は今造の出方を、期待と諦めの入り交じった複雑な思いで見詰めている。

 今造の中興の祖で、現在は今造のグループ社主を務める檜垣俊幸氏は温かい人柄で知られる。一方、現社長の檜垣幸人氏は、厳しい仕事姿勢を取る合理的な経営者として語られる。今後の今造の経営判断によっては、長年にわたって構築された海事クラスターの団結力に亀裂が入りかねない。

 日本の造船業界は、さしもの今造すら窮地に陥るほどの難関に直面している。