分析そのものを目的化させない

 新規加入者の加入動機や、解約リテンション施策によって顧客が態度変容した理由やプロセスなどの顧客データは、WOWOWの顧客接点を持つカスタマーセンターに蓄積されていました。

 カスタマーセンターは、WOWOWコミュニケーションズというWOWOWグループの会社にあり、カスタマーセンターには、電話による加入・解約だけでなく、WEBサイトからの加入の管理や、日常的な質問や意見への対応も含めた接点が集約され、WOWOWの顧客状況を一元的に把握できる場所になっていました。

 2014年6月、私はカスタマーセンターのあるWOWOWコミュニケーションズの取締役に就任しました。

 そしてカスタマーセンターを活用して、WOWOWの顧客の動きや変化をスピード感をもって把握し、全体像を明確にしてマーケティングに生かすことを加速する業務をスタートさせました。

 まず最初に、一人ひとりの顧客をより詳しく知り、優良顧客をあぶり出すために、WOWOWの経営戦略部門とともに顧客のグループ分けに手を付けました。

 マーケティングデータの分析には、対象が広くなりデータ量が大きくなればなるほど、分析そのものが目的化しやすくなるという傾向があります。

 何を目的に大量のデータから、何を抽出して分析するのか。分析によって何を理解し、どんな企画や施策につなげたいのか。マーケティング担当者がそれを認識し、情報を整理した上でスタートしないと、人や時間、費用を費やしても、大量の分析結果を前に何が分かったのかが分からなくて茫然とする結果に陥りかねません。

 私たちは、顧客データ分析の大目的を「エンゲージメント効果が上げるポイントの明確化」に置くことにしました。

 それまでの解約リテンション業務で得た、「解約しやすさ」に関する知見やデータをもとに、顧客に長期にサービス(番組視聴)を利用し続けてもらうためには、何をすべきで、何をすべきでないのかを、見える化させる作業がスタートしました。

(続く)