今、顧客減、会員減に悩んでいる企業は多い。中でも定額課金=サブスクリプションモデルで利益を上げている場合には、会員取得ばかりに目を向けて、離れてしまう顧客には、なかなか有効な手を打てない現状だ。
元WOWOWグループ初の女性取締役であり、顧客を引き留める「リテンションマーケティング」で実績を上げた大坂祐希枝氏が初の著書である『売上の8割を占める 優良顧客を逃さない方法 利益を伸ばすリテンションマーケティング入門』を発売。
この連載では、この著書から一部抜粋してご紹介する。

優良顧客になるかどうかは、
入り口で決まっている!?

前回は、加入動機と加入している期間によって、顧客に勧める内容を分けたら、解約率を減少させることができたことをご紹介しました。

今回は、加入した顧客が優良顧客化するポイントはどこにあるか、をお伝えします。

第13回で、解約した顧客にもデプスインタビューを実施したと書きました。実はその結果から「優良顧客化しやすい顧客」の姿が見えてきました。

WOWOWの優良顧客とは、長期に加入してやめない顧客のことですが、実は優良顧客になる方は「加入する時点から嗜好や生活スタイルがWOWOWのサービスにフィットしていた」のです。

もちろん、優良顧客の中には、「加入時には、長期に契約するつもりはなかった。たまたまサッカーの大きな試合を放送すると知って、それだけ見てやめるつもりで加入した」という人もいました。しかし、こういう方たちも、よく聞いてみると「嗜好や生活がWOWOWのエンターテインメントとフィットしている」のでした。

単純に見たい番組を見るだけでは、やめてしまう可能性がありますが、エンターテインメントに対する嗜好や生活スタイルが、WOWOWと相性が良いと、無理なく長続きするのです。

皆、映画やドラマ、スポーツや音楽など好きな番組を自由に選んでたっぷり見られるエンタメライフを望んでいて、WOWOWへの加入によってそれが実現したことに満足していました。そしてその人々がWOWOWを継続している理由の多くが、「自分の期待を裏切らずに良い番組を放送してくれていると思うから」。

優良顧客がWOWOWに感じている価値は、自分に合う番組や番組編成、つまり値引きやプレゼントではなくWOWOWの本来のサービスそのものでした。