『万引き家族』に見る
年金制度の現状

 では、年金制度はこのままでよいのでしょうか。「年金が破綻する」などと不安をあおるつもりはありませんが、恩給から拡大した制度が曲がり角を迎えているのは事実です。

 まず、制度の持続性です。厚生労働省は公的年金制度の意義について、現役世代が支払った保険料を仕送りのように高齢者などの給付に充てる「世代と世代の支え合い」と説明していますが、初枝の年金を目当てに暮らす『万引き家族』の柴田一家では、逆に高齢世代が現役世代を支えているだけでなく、初枝が亡くなった後も、治と信代は初枝の死を隠して年金を受給しようとしていました。これは現役世代に相当する治が日雇い労働者、信代はパート勤務なので、仕事と収入が安定していないことに起因しています。

 言い換えると、制度が想定していた「現役世代→高齢者」という所得移転の関係が逆転していたことになります。実際、ほとんどの現役世代は払う保険料よりも受け取る給付が少ない「払い損」になるとされており、こうした現象が起きる一因には「68歳以上はおつり」と言っていた頃と比べて、少子高齢化が進行したことが影響しています。

 さらに、同じ「勤め人」という位置づけなのに非正規雇用の人が厚生年金に入れない実態があるし、女性と社会保障の関係を取り上げた第18回(「安倍政権の看板政策『女性活躍』、看板倒れの危険が分かる映画」)で述べた通り、女性を排除しやすいデメリットもあります。

 このように考えると、少子高齢化を踏まえて、国がどこまで「約束違反」するのか、その際にどう説明するのか。そして、もう1つの問題として、対象から外れやすい非正規雇用者や女性の生活をどう保障するのか、非常に難しいかじ取りを迫られています。制度の持続可能性と生活保障を確保するため、裕福な高齢者の給付削減や民間保険の活用などを国民一人ひとりが考えなければならない時期がきていると思います。