相手の長所と短所を「同じ数」だけ書き出すと、
相手の真の姿が見える

【年収1億円の習慣】<br />人の「2倍」学べる方法は、「短所」も「長所」も両方見ること山下誠司(やました・せいじ)
(株)アースホールディングス取締役(株)サンクチュアリ代表取締役
日本最大級の240店舗を展開する美容室「EARTH(アース)」を運営する、(株)アースホールディングス取締役[スタッフ3000名、年商180億円]。うち70店舗をフランチャイズ展開する、(株)サンクチュアリ代表取締役も兼任。(株)サンクチュアリは、自社から輩出したフランチャイズ30社とともに、関東、甲信越、東海、北陸、北海道、福岡で展開[スタッフ900名、年商50億円]。1976年、静岡県生まれ。高校卒業後に上京し、19歳で年収180万円から美容師を始め、31歳で年収1億円を超える。19歳から23歳まで、ほぼ休みなく仕事をし、24歳から39歳までは、始発から終電まで365日、15年間、1日たりとも休みなく仕事。40歳からは、仕事と遊びの壁が、完全になくなる。愛車は、フェラーリ488スパイダー。趣味は「仕事」。

社員からの求心力を失っていた私に、手を差し伸べてくださった方がいます。外食産業の世界で「接客の神様」と呼ばれた、現、(株)HUGE社長の新川義弘(しんかわ・よしひろ)さんです。

新川さんは、かつてグローバルダイニング(外食企業)の要職を務めていた人物で、ジョージ・W・ブッシュ元米大統領と小泉純一郎元首相の「会食の接客」を担当したことでも知られています(現在は、さまざまなブランドのレストランを経営されています)。

離職を止められない私に、新川さんは、
「10歳離れたら外国人、20歳離れたら宇宙人だと思って接したほうがいいですよ。相手の気持ちを理解したいなら、社員の長所と、短所を、同じ数だけノートに書き出してみてはいかがですか?」
と教えてくださいました。悪い点だけを見るのも、良い点だけを見るのも、相手を「半分」しか理解したことにならないからとのことです。

「人の振り見て我が振り直せ」ということわざは、「人の行動を見て、良いところは見習い、悪いところは自分に置き換えてあらためる」という意味です。
ですが、かつての私は、「良いところを見習う」という意識が希薄で、相手の欠点にだけ目を向けていました。長所も短所も両方見ていれば、その人から「2倍」学べるのに、「相手の良いところ」を見ようとしていなかったのです。

ノートに、社員の「長所と短所」を同じ数だけ書き出したところ、「なるほど、どんな人間にも、長所も短所も、実は半分ずつあるのだ」と思えるようになり、感情的になって叱ることも、あるいは、漫然とほめることもなくなり、後輩との人間関係が劇的に良くなりました。
また、人物像が立体的に見えはじめてきて、社員のコンピテンシー(能力・適性のこと)を正確に把握できるようになった気がします。つまり「この社員に、この仕事を与えると、どのような結果が出るか」がわかるようになったのです。

たとえば、中谷仁彦(なかたに・まさひこ)は、かつて、サボリの常習犯でした。「チラシを配ってきます」と言って店を出ていった後を、探偵のように私が尾行すると、いつもパチンコばかりしていたのです。
ルールを守らない彼に、私は手を焼いていました。なぜ私が中谷のことを問題視しているのか、中谷の長所と短所をノートに書き出してみると、理由がはっきりしました。

彼が、「私に持っていないもの(性格や能力)」を持っていたからです。
几帳面で、何事にも完璧を求め、ルールは必ず守る私にとって、ルールを無視して、おおらかに振る舞う彼の気質は、受け入れ難いものでした。私は、「自分の長所が正しい」と思うあまり、「彼の長所の正しさ」を理解できなかったのです。

そのことに気がついた私は、あえて彼を「チラシ配りのリーダー」に抜擢しました。ほかにもサボっている社員がいたので「毒をもって毒を制す」ことにしたのです。
ルールを守る人に、ルールを守らない人を管理させるより、ルールを守らない人に、ルールを守らない人を管理させたほうが「サボリ防止」ができると思ったのです。
「蛇(じゃ)の道は蛇(へび)」です。中谷は、まさに適任でした!

中谷は、いつ、どこで、どのタイミングで社員がサボるのかを、恐ろしいほど、熟知していました。「かつての自分の行動」を振り返ればいいだけだからです。

「リーダー役」を与えられたことを得意に感じた中谷は、やがて頭角をあらわします。「絶対にサボれない、鬼のしくみ」を構築し、チラシの配布枚数を増やすことで、1ヵ月あたりの客数を5倍に増やすことに成功したのです。現在、中谷は、17店舗を経営するフランチャイズ・オーナーへと成長し、年収は4000万円を超え、「フェラーリ458イタリア」に乗り、後輩たちからの厚い信用を得る、誰もが目標とするリーダーになっています。

人間関係でつまずいたり、周囲の協力が得られないときは、「相手の長所と短所を同じ数だけ、ノートに書き出す」ことをしてみてください(できるだけ多く書き出す)。
すると、相手に対する偏見がなくなり、公平に評価できるようになります。

「なぜ、自分が相手に苦手意識を持っているのか」「自分と相手の違いはどこにあるのか」「どの仕事を任せれば力を発揮するか」といったことがわかるようになるので、人間関係を良くするヒントが見えてきます。

「自分の長所と合わないから」と、人を選んではいけません。「自分にない能力を持っている人」と一緒に仕事をしないかぎり、「年収1億円」は達成できないからです。